サイト内
ウェブ

「生物多様性オフセット」 詳細解説

読み:
せいぶつたようせいおふせっと
英名:
Biodiversity Offset

事業や開発など人間活動が、ある特定の場所における生態系へ与える負の影響を、別の場所での生態系の再生や創出などにより代償することを、生物多様性オフセットと呼ぶ。オフセットは「相殺」を意味する言葉で、CO2の排出を間接的に削減するカーボンオフセットなどにも使われている。生物多様性オフセットを行う場合には、想定される悪影響と同じかそれ以上の価値をもつ取り組みが求められる。

生物多様性オフセットの代表的な手法が、埋め立てなどの開発行為による悪影響を軽くするための補償・代替措置である代償ミティゲーション(ミティゲーション)だ。米国では、湿地などの自然空間を守る手法としてミティゲーションが活用されており、自然環境を復元・ストックして債権として売り出す「ミティゲーションバンキング」という仕組みもある。これは、ミティゲーションによって得られる環境改善効果の超過分を証券化し、それを購入するとミティゲーションを実施したのと同じ評価が与えられるというものだ。

生物多様性オフセットの実施にあたっては、代償行為が開発事業による生物多様性への悪影響を本当に相殺しうるか否かを評価するための、原則や基準が必要となる。生物多様性オフセットの普及を進めている国際的なネットワークである「ビジネスと生物多様性オフセットプログラム(BBOP)」は、生物多様性オフセットに関するガイドラインやハンドブックなどを作成しており、次の「生物多様性オフセットの10原則」を策定している(以下は抜粋)。

1) ノーネットロス原則:生物多様性オフセットは(以下同じ)、元の地域における事業の実施による生態系の損失をゼロとする(ノーネットロス)か、測定可能な保全成果が実現されるように計画・実施する
2) 追加的な保全成果:オフセットしなかった場合の結果を上回るだけの保全成果を達成する
3) ミティゲーション階層の堅持:環境影響の回避・最小化や、元の場所での回復措置などが取られた後になお残された悪影響を相殺するのに用いる
4) オフセットの限界:生物多様性は代替できず脆弱なものであるため、影響が完全に相殺できない場合もある
5) 景観面の配慮:生物学的・社会的・生物多様性の文化的価値などあらゆる情報を考慮して、景観全体の状況の中で計画・実施する
6) 利害関係者の参加:意思決定への利害関係者の参加を確保する
7) 公平性の配慮:公平に計画・実施し、とくに先住民や地域コミュニティに配慮する
8) 長期的な成果:事業による影響が続く期間または永続的に実施し、モニタリングや評価を行う
9) 透明性の確保:透明性を確保し、かつ時宜を得て実施する
10) 科学と伝統的知識の尊重:科学的な情報と伝統的な知識を背景に計画・実施する

日本では環境影響評価法が、環境保全措置の検討にあたって環境影響の回避・低減を優先した上で、必要に応じて代償措置の検討を行うこととしている。生物多様性オフセットは、2010年10月に名古屋市で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)でも、議題として取り上げられる予定だ。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。