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「生物多様性」 詳細解説

読み:
せいぶつたようせい
英名:
Biological Diversity

生物は、同じ種であっても、生息・生育する地域によって、また、個体間でも形態や遺伝的に違いがある。そして、大気・水・土壌などさまざまな環境に適応して多様な生物種が存在し、海洋、森林、湖沼などいろいろな生態系を形成している。こうした生物の多様さを総称して生物多様性という。生物多様性には、種の多様性、種内の多様性、生態系の多様性―の3つのとらえ方があり、自然が健全な状態であり続けるためには、そのどれもが保たれていなければならない。1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択された生物多様性条約では、生物多様性を、「すべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」と定義している。

人間は、地球生態系の一員として他の生物と共存し、生物を食糧や医療などに利用しているが、近年、生物の生息環境が悪化して生態系の破壊が引き起こされたりして、野生生物の種の絶滅が進行している。希少種の取引規制や特定の地域の生物種の保護を目的とするワシントン条約ラムサール条約などの国際条約を補完し、生物の多様性を包括的に保全して生物資源の持続可能な利用を行うための国際的な枠組みを設ける必要性が生じてきたため、1992年5月に生物多様性条約が採択された。

同条約は、2010年6月現在で192カ国と欧州連合(EU)が締結しているが、米国は未締結だ。同条約の目的は、地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること、生物資源を持続可能であるように利用すること、遺伝資源の利用から生ずる利益を公正に配分することなどだ。日本では1995年に、子孫の代になっても生物多様性の恵みを受け取ることができるよう、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本方針と、国のとるべき施策の方向を定めた生物多様性国家戦略が決定された。また、生物多様性センターが設置された。

現在の「生物多様性国家戦略2010」は、生物多様性基本法に基づく初めての国家戦略として2010年3月に閣議決定されたものだ。2007年に策定された「第3次生物多様性国家戦略」の構成や計画期間を継承しながら、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向けた取り組みを視野に入れて内容の充実が図られている。主な内容は、中長期目標(2050年)と短期目標(2020年)の設定、COP10の日本開催を踏まえた国際的な取り組みの推進、国内施策の充実・強化などだ。

その後、同年10月に愛知県で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、遺伝資源の採取と利用、利益配分(ABS)の国際的な枠組みである「名古屋議定書」と、生物多様性の損失を食い止める新目標の「愛知ターゲット」が採択された。また、途上国への資金援助の仕組みや、「SATOYAMAイニシアティブ」などについて合意が得られた。一方、生物多様性の保全を目指す企業の取り組みも盛んであり、2008年4月には企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が発足した。

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