設計から材料や工法の選定、建築工事、使用するエネルギーの種類や住まい方にいたるまで、環境への負荷を低くすることをめざした住宅をエコハウスという。エコロジーハウス、またはエコロジカルハウスを略したものだ。日本では、環境共生住宅やエコ住宅、省エネ住宅などさまざまな呼び名がある。住まいをエコハウスにする動きは、ドイツやスイスなどで1970年代から始まったと言われており、欧米各国には個性的なエコハウスがたくさんある。エコハウスの要件としては、主に次のものがある。1) 自然にできるだけ負荷をかけない、2) 人や生物の健康を害さない、3) 再生可能エネルギーをできるだけ利用する、4) 土地や住んでいる地域への配慮を忘れない、5) 要らない設備を取り入れない。
住まいをエコハウスにする上で重要なのが、設計やデザインの段階だ。エコハウスを実現するための技術や材料、工法はたくさんあり、そのどれを選ぶか。また、住み始めてからのエネルギー使用量をどうやって低くおさえるか。さらには住み終わってから出る廃棄物を少なくできるかなど、環境負荷の低減をあらゆる角度から検証する必要がある。たとえば、環境省に勤めながら自宅をエコハウスに建て替えた小林さんの場合、建築にあたって次のような目標を設定したという。1) 家を長持ちさせて、解体時に出る建築廃棄物を減らす、2) 地球温暖化や大気汚染を防止する、3) 化学物質による汚染を減らす、4) 水の循環を重視する、5) 近隣の環境になじませる。こうして建てられたエコハウスは、建設4年目で建て替え前に比べてCO2を4割近く減らすことに成功したという。
エコハウスは、新エネルギーなどの新技術を利用するものだけではない。雨水利用や屋上緑化など従来からある技術をうまく使ったり、古くから活用されてきた自然の恵みを新たな発想と技術で現代におきかえたりした家もある。後者の代表的なものがパッシブソーラーハウスだ。太陽が高くなる夏には屋根のひさしで光を防ぎつつ自然換気し、太陽が低くなる冬には光を窓から取り込みながら断熱効果で暖かさを確保することで、室内環境を快適な状態に保つ。こうした発想は日本の古民家に通じるところがあるという。ほかにも、できるだけ木の素材を使ったり壁に土をぬったりして家全体を呼吸させるつくりにすることや、つる植物を使って夏の暑さを防ぐ「緑のカーテン」などの知恵も再認識されている。さらに、住まい自体を環境の一部にしてしまうツリーハウスのようなあり方も注目されている。
エコハウスのひとつである環境共生住宅については、「環境共生住宅市街地モデル事業」や「環境共生住宅建設推進事業」など、国による補助制度がある。環境省は、温暖化対策技術を導入したエコハウスを増やすために、地域特性を踏まえたさまざまな技術を導入したエコハウスを13自治体に整備。環境学習や普及啓発の場として活用している。同省はまた、省CO2性能の高いエコ住宅の普及を加速化させることを目的とした「エコ住宅普及促進事業」を、2008年度から実施している。さらに、同省と経済産業省、国土交通省は、快適で美しく、スマートな暮らしをめざす「ロ・ハウス構想」を推進しており、2007年に成果を報告書にまとめ、公表した。
一方、国土交通省は、住宅における省CO2対策を進めるため、先進的な事例を公募して整備費などの一部を補助する「住宅・建築物省CO2推進モデル事業」を実施している。同事業の補助対象に選ばれた技術には、1) 太陽熱連携ヒートポンプ給湯器とグリーン電力システム利用、2) ハイブリッド換気住宅によるゼロエネルギータウン・プロジェクト、3) CO2オフ住宅などがある。このように、エコハウスを実現するための技術や工法は年々進歩し、建築する人も増えている。それだけに、エコハウスは環境技術の寄せ集めではなく、環境志向型のライフスタイルを、衣食住などの暮らしの場面で実現していくひとつの手段であるということを忘れてはならない。