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「OECD環境アウトルック」 詳細解説

読み:
OECDかんきょうあうとるっく
英名:
OECD Environmental Outlook

世界の経済を成長させることを目的として、1961年に設立された国際機関のOECD(経済協力開発機構)は、環境問題を解決に導くための活動にも力を入れている。なかでも定期的にまとめている「環境アウトルック」は、環境分野の将来像についての予測と評価を踏まえた政策提案として定評がある。アウトルックとは、「見通し」や「展望」を意味する英語だ。2012年3月に発表した「OECD環境アウトルック2050」では、2008年公表の環境アウトルック2030で緊急な対応が必要と提言した、気候変動生物多様性、水、汚染による健康影響の4つに重きを置いて、オランダ環境評価庁(PBL)と共同で作成したシミュレーションモデルを用いて、2050年までの予測を行っている。

それによると、約40年後の2050年頃には世界経済の規模が現在の約4倍に拡大し、新興国や途上国における生活水準の向上などに伴い、エネルギーや食糧、天然資源などへの需要が飛躍的に増大する。それに都市化の進行があいまって、大気汚染や廃棄物処理など環境に関する課題も増える。そして、もし積極的に対策を講じなければ、地球温暖化の進行や生物多様性の損失に歯止めがかからなくなり、人類と生態系が共存できなくなると予測している。さらに、淡水を入手することが困難な地域も拡大する。このように、国際社会が環境問題を解決するための行動を早い段階でとらなければ、持続可能な社会の構築は難しいと警告している。

環境アウトルック2050はこうした悲観的なシナリオを示す一方で、その予測をくつがえすための政策を提案している。まず、環境税排出量取引のように、市場原理に裏打ちされた手法を導入することだ。その結果、環境汚染を発生したり放置したりする方が、環境にやさしい代替手段をとるよりも割高になる。このほかにも、自然公園の入園に料金を課すなどの自然資産や生態系サービスへの評価・課金、環境に有害な補助金の廃止、効果的な規制や基準の考案、グリーンイノベーションの奨励などが効果的であるとしている。

さらに、これらの環境政策を実践していくための戦略を提示している。そのひとつが、環境目標をエネルギーや農業、運輸など他分野の政策に統合することだ。理由としては、経済政策や他分野の政策の方が、環境政策よりも社会全体に対する影響が大きいためだという。また、政策どうしの相乗効果や相互利益を引き出すことが重要であるとする半面、相反する可能性のある政策を監視する必要があるとも指摘している。たとえば、温暖化対策としてバイオ燃料の利用が増えると、バイオマス用植物の耕作地が急速に拡大し、生物多様性に悪影響を及ぼすおそれがある。

環境アウトルック2050は、こうした予測と評価、政策提案を政策決定者が真摯に受け止めて先進的な環境政策を導入することが、持続可能な社会に向けた第一歩になるとしている。そのためにも、政府、地方自治体、企業、市民などあらゆる主体が、環境に配慮した社会を実現するためにできることを考え、行動することが重要だ。

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