低炭素社会を実現するには、省エネや節電など企業や個人による取り組みを積み重ねて地域全体をスマートシティ化し、電力などのエネルギーをむだなく使う努力が欠かせない。そのためには、地域内にある個々の住宅がエコハウスやスマートハウスを目指して、エネルギー使用量をできる限り抑える必要がある。エネルギー基本計画にも目標が掲げられている通り、2030年における住宅のゼロエネルギー化を達成するため、住宅をネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH=ゼッチ)にする取り組みが進められている。
ZEHは、住宅における年間の一次エネルギー消費量を、正味(ネット)でおおむねゼロにする住宅だ。外壁や窓を高断熱のものにすることや、省エネ性能の高い空調設備やLEDなどの照明器具の導入、エコキュートをはじめとする高性能な給湯設備の設置などが効果的だ。それとともに太陽光発電などの再生可能エネルギーによる創エネを行って余剰電力を売電したり、蓄電地を設置して蓄エネしたりする。これらをホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)により適正に制御して、住宅の年間一次エネルギー消費量を正味でゼロにすることを目指す。
国土交通省と経済産業省は、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」と、「住宅のゼロ・エネルギー化推進事業」を行っている。「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」は、新築及び既築の住宅をZEHとすることを目指す。建築主または所有者を対象とし、補助率は対象費用の原則2分の1以内で、補助限度額は1戸あたり350万円。一方、「住宅のゼロ・エネルギー化推進事業」は、住宅躯体や設備の省エネ性能の向上や再エネの活用などにより、新築及び既築の住宅をZEHにすることを目指す。中小工務店を対象とし、補助率は対象費用の原則2分の1以内で、補助限度額は1戸あたり165万円。
両事業とも、一般社団法人環境共創イニシアチブと、一般社団法人環境共生住宅推進協議会による共同事業として、毎年度、募集が行われている。「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」の2014年度までの交付決定件数は、2436件に及ぶ。地域別では関東地方が多く、トップは栃木県だ。
住宅をZEH化するにあたり、屋根などにソーラーパネルを載せてソーラーハウスにすることはもちろん、自然換気によるパッシブソーラーシステムを採用してパッシブハウスにしたりするのも効果的だ。