開発などで失われた自然を積極的に再生することにより、生態系の健全性を回復する事業のこと。2003年施行の自然再生推進法により、「自然再生を目的として実施される事業」として位置づけられた。自然再生事業を実施する者は、自然再生協議会を組織して、自然再生の対象区域や目標などを定めた「自然再生全体構想」を作成する。その上で、「自然再生事業実施計画」を作成する。環境省によると、2014年3月現在で全国に25の協議会があり、うち24協議会が全体構想を作成している。また、35の実施計画が作成されている。
自然再生事業は、地域住民やNPOなど多様な主体の協議と合意のもとで実施されなくてはならない。また、科学的なデータに基づききめ細やかに進められる必要がある。生態系は複雑で変化するため、事業を進める際には、生態系に関する十分な事前調査や、事業着手後の継続的モニタリングを行って、事業に反映させていく。また、生態系の回復は自然の回復力でなされるもので、長い時間がかかる。生態系は精妙なバランスの上に成立しており、それぞれの地域の条件に応じた丁寧な手法により、自然の再生・修復を進めていくことが肝要だ。
さらに、単に景観を改善したり、特定の植物群落を植裁したりするのではなく、地域生態系の質を高めて生物多様性の回復を目指すことが求められる。たとえば、河川の場合では、直線化した川筋を蛇行した流れに戻すことによって湿原の回復をはかったり、都市臨海部における干潟の再生や森づくりをしたりする工夫をこらす。一方、地域固有の生物を保全する上では、中心となる保護地域の保全だけではなく、広い地域にわたる生態的ネットワークの形成が重要となる。自然再生事業は生態的ネットワークの形成にも貢献する。