旅先やふと訪れた場所の風景に心を奪われた人も少なくないはず。今回は本企画ライター陣に「これだ!」と思う自分の住む「まちの絶景」について教えてもらいました。
四季折々の表情をみせる自然の雄大な美しさはもちろんもうすぐなくなってしまう文豪が愛した絶景スポットも見逃せません。週末や連休を使って足を運んでみてはいかがでしょうか。思い立ったが吉日ですよ。
私のおすすめの絶景スポットは〈奥州湖眺望台〉。市内西側の玄関口に位置する〈胆沢(いさわ)ダム〉にある展望台です。周辺は自然に囲まれていて、向かう道中も気持ちのいいドライブが楽しめます。
〈奥州湖眺望台〉から見える焼石連峰。
左手には栗駒国定公園の一部である「焼石連峰」が一望でき、右手には日本三大扇状地のひとつである「胆沢扇状地」が広がっています。
胆沢扇状地。
季節や時間帯によって、異なる色の空・水・緑・風を360度感じられ、ほかに人がいなければ、美しい景色を贅沢に独り占めできちゃうかも!
また、展望台の反対側にある〈胆沢ダム管理支所〉に行くと国内最大級のロックフィルダムであるダム堤体の上を歩くことができ、そこから眺める景色も圧巻なので、ぜひあわせて訪れてみてもらいたいです。
紅葉シーズンもおすすめですが、11月頃から眺望台までの道が閉鎖されるので事前に道路情報の確認をお忘れなく。
information
奥州湖眺望台(胆沢ダム)
住所:岩手県奥州市胆沢若柳
Web:胆沢ダム
photo & text
小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
これ、山並みのように見えませんか? 山に雲がかかっているかのように……。しかし、実はこれは雲海の一部なのです!
ここまで大きく波のようになったものを見たのは、私も初めてでした。
この雲海を見たのは、羅臼町の〈羅臼国後展望塔〉から。そして、この写真に写っている山は国後島の山頂です。
羅臼町にはほかにも雲海を楽しめる場所がいくつかあるので紹介します。
・くじらの見える丘公園・知床峠の駐車場・知床羅臼野遊びフィールド
羅臼はこの時季、気温が30度を超えることは珍しく、気温は高めでも風が涼しく感じられます。国内のほかの地域よりも比較的快適に過ごすことができるので、ぜひ遊びに行ってみてください。
information
羅臼国後展望塔
住所:北海道目梨郡羅臼町礼文町32-1
Web:羅臼国後展望塔
profile
近藤雨 こんどう・あめ
今年5月より、北海道羅臼町の地域おこし協力隊に着任し、まちの魅力発信などの仕事をしています。出身は大分県です。ドラマ『北の国から 遺言編』のロケ地である羅臼に住んでみたいと思ったのが何よりの応募理由でした(笑) 大分とはいろんな面で異文化なことがあり、だからこその視点で情報発信をしたいと思っています。Instagram:@kondo_ame
JR三鷹駅から徒歩10分ほどの場所にある〈三鷹跨線人道橋(以下:跨線橋)〉は、昭和4年に三鷹車両センターと中央線の線路を跨ぐように立てられた橋で、JRの線路を挟んで北と南を行き来できる通路として、地元に住む人たちに利用されています。
黄昏時の〈跨線橋〉から美しい夕焼けを眺めに来る人があとを絶ちません。
三鷹ゆかりの文学者で知られる太宰 治もこの場所を愛していたそうで、仲のいい友人が来ると、この場所に連れてきたといわれています。
始発が発車する前の電車が並ぶ車庫。まるで模型のようです。
天気がいい日は富士山が見え、黄昏時には雲や夕焼けが織りなす美しい空や、どことなく昭和の面影が漂うエモーショナルな風景が広がります。
朝焼けの頃には、特急「あずさ」や「かいじ」が並び、時間帯によって移りゆく風景が楽しめるスポットです。
ノスタルジックな風景は多くの人たちをホッコリとした気持ちにさせてくれます。
橋の上から小さな子どもが総武線や東西線に向かって手を振ると、プワーン!と警笛を鳴らしてくれたり、手を振りかえしてくれたり、大人も子どももワクワクできる三鷹を代表する絶景スポットです。
〈跨線橋〉から都心部方面を望む景色。
そんな跨線橋が、老朽化に伴い取り壊しになることが昨年決定。改修工事をしない理由は、維持管理費が高額であることや、耐震性に問題があるからだそうです。
よく見ると橋はところどころ電車のレールなどの廃材が使用されている。
なお、跨線橋の撤去後に一部を市の敷地に移して保存することが決まったようですが、詳細はまだわかっていません。
太宰 治の写真でも知られる南側の階段。
今できることは形があるうちに、ここで見られる美しい風景を目に焼きつけておくこと。取り壊しまでまだ時間がありますのでぜひ、足を運んでみてくださいね。
information
三鷹跨線人道橋
住所:東京都三鷹市上連雀
photo & text
Momo*Kinari きなり・もも
ライター・エディター。東京在住。Webや雑誌、旅行ガイドブックで撮影・執筆。 国内外でグルメや観光スポットを取材。たまに料理やモノづくり、イラストの仕事もしています。 Twitter:@Momo_kinari
日本海と鳥海山に囲まれている秋田県のにかほ市では、いくつもの絶景が見られます。
このまちの絶景といえば、まずは鳥海山。まちのどこにいても見える雄大な山は、まさに人々の心の風景。山の姿がくっきりと見えるのは、1年の3分の1ほどといわれていることもあって、きれいな鳥海山が見える日はうれしくなります。
また、標高2236メートルの高山であるため、冠雪の様子も美しく、冬にかけて雪が積もっていく様子や、夏が近づくに連れて雪解けしていく様子も、このまちで季節の移ろいを彩っています。
春になると雪が解けて山肌が少しずつ見えてきます。
鳥海山の山頂から海まで、直線距離がわずか16キロメートルという稀有な地形。山頂からも海が見え、海岸からも山が見えるという、欲張りな絶景を楽しむことができます。
海水浴場から見える鳥海山。
さまざまな表情を見せる、何度見ても飽きない鳥海山。ぜひにかほ市の絶景を味わいに来てください。
同じ山でも、隣町の山形県遊佐町からはこんなに違って見えるおもしろい山です。
photo & text
國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
text & photo
Chihiro Ogawa, Ame Kondo, Momo*Kinari, Saki Kunishige
小川ちひろ/近藤雨/Momo*Kinari/國重咲季