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中川紅葉のエッセイ連載!「1人旅でよく話しかけられます」/ココロすっぴん#32

  • 2024年4月26日
  • Walkerplus

青山学院大学に在学する現役女子大生で、演技やバラエティなどマルチに活躍している中川紅葉さんによるエッセイ連載「ココロすっぴん」。かなりの読書家で、大学生・タレント・インフルエンサーなどのさまざまな顔を持つ彼女が日々感じたことを、忖度なく書き綴ります。

■#32「優しそうな雰囲気、まとえてますかね」

新年度。学生生活も比較的終わりに近づいてきている。去年よりは大学に行く時間も確保ができているし、「この日は大学!」とスケジュールを大人たちに共有するようにした。何よりも仕事が第一優先な私の思考は相変わらず揺るがずにある。でも、“23歳の1人の人間”としての時間を楽しむという気持ちが、最近芽生えてきた。

先月のある日、国内線のセールが始まったらしいと聞き、すぐに地方への旅行券を買った。共有のスケジュールには【5月〇日:この日、できれば休みください】と書き込み、マネージャーにも連絡をした。旅行が好きなわけでも、変わりたいわけでもない。でも、毎日この街にいてはダメだと、なんとなく思っていた。

私の住む街は比較的都会で、最近は外国人によく会う。もはや、日本人より観光客の方が多い気すらする。彼らはきっと、東京を満喫して母国に帰った時に「自分の国もいい街だな」と思うんだろうな。そう考えると、私も一回外の空気を吸って、住んでいる街に帰ってきた方が、またこの街で色んなことを吸収できるようになるのではないだろうか。そんなことを思い、せっかちな私は5月の旅行まで待てず、春休み中も近場にちょくちょく旅に出ていた。

母が用事で地方に行くついでに、私もついて行って1人旅をすることが何度かあった。夜に集合して同じ宿に泊まり、また母は用事に出かけるため、次の日も私は新しい街を1人で観光するのだ。

3月。藤沢で泊まるホテルへ行き荷物を預けると、母はすぐに用事に向かった。1人、私は何も知らない街に取り残された。ぼーっとするのも勿体無いのでとりあえず駅に向かうと、どうやら江ノ島が近いらしい。

江ノ電に乗り無事最寄りに着くも、日差しが強すぎてしんどくなってきた。とりあえず新江ノ島水族館に向かい、持ってきたカメラで魚を撮ることにした。前回は誰と来たかさえ忘れているほど、久しぶりの“えのすい”。入り口のカフェで買ったコーヒーを爆速で飲み終えたおかげでお腹が痛いし、後ろのギャル系カップル×3組に圧倒されながらチケットを買う。

中に入ると、うっすらあった記憶が蘇り、魚の場所まで思い出してきた。思ったより人は多くないな、と写真を撮っていると、なんとなく嫌な予感がした。先ほどから私の後ろをついてくるカメラ男子がいる。早めに退散しようと早歩きをしたところで話しかけられた。

「今、時間があったらモデルになってほしいです」。そう、少しカタコトで言った彼は、北海道に留学をしている中国の留学生さんだった。東京に撮影をしに来たが、モデルさんと都合が合わず1人で水族館に来たことを話してくれた。15分くらいでしたらと写真を撮ってもらい、インスタを交換した。旅行楽しんでくださいね、と別れた後、いや私もこの辺地元じゃないけどなと自分にツッコんだ。

1週間後。彼の自宅に私のエッセイ本が置いてある写真と、“難しい表現もあったが読みました”という、素敵なメッセージを送ってきてくれた。そして、えのすいで撮った私の写真をデータ化し、添付してくれた。たくさんの感想の後に「くれはちゃんがこの写真を気に入ってくれたら嬉しいです」と書いてくれていた。

写真が素敵だったのはもちろん、次いつ会えるか分からない絶妙な距離感を画像から感じるのは初めてで、少しだけ泣いてしまった。連絡先も知っているのだから、会おうと思えばきっと、いつでも会えるはずなのに。


4月。また、熱海にいた。また、だ。半年で4回くらい行っている。母が戻るまで1人で観光をしていた。もうさすがに観光し尽くしたが、やはり来宮神社に行き、おみくじを引くと「慌てるな、待て」と書いてある。また、だ。待つことと焦らないことが、私の大敵である。待てないよ、生き急ぎたいよ、モヤモヤしながら商店街まで歩いて下ってきた。

チラッといつも入れない喫茶パインツリーを覗いてみると行列ができていた。時間はとにかくあるので並ぶことにした。後ろに私と同い年くらいの男の子とお父さんが並び、40分ほど待つと店内に案内された。お腹はあまり空いていないが、なんとなくナポリタンを頼むと思ったより量が多い。コメダ珈琲に初めて行った時の衝撃くらい、量が多い。なんとかおいしく食べ終わり、残りの珈琲を飲んで出ようとした時に、頼んでもいないプリンが出てきた。え?という顔をしていると、先ほど後ろに並んでいた親子が頼んでくれていた。「あの方にも同じのを」のアレである。

え、喫茶店でそんな制度あるの?とポカンとしていると、お父様の方が笑顔でこちらを向いている。とてもおいしいですありがとうございます、と笑顔で言うが、こちらは本気でお腹がいっぱいである。だったら最初からプリン頼めば良かった〜と人の好意を差し置いてそんなことを考えてしまう自分に少々ムカついた。

気まずくて、そそくさと店内を後にし、必死に海辺を散歩し消費する。今夜は母と旅館の食べ放題だと言うのに。

ここまで読んでくださった方には分かるだろうけれど、中川、1人でいると話しかけられることが多いのです。これは私から優しい雰囲気が出ている、という良き方向に受け取って良いのだろうか。そんな風に思う旅でした。

(留学生さん、熱海の親子のお二人、ありがとうございました!)

■【ヒトコト】
水曜日の更新、遅れましてごめんなさいでした!

1年半ぶりくらいにしっかりめの風邪を引いてしまい、35時間ほど寝ていたら何曜日か分からなくなって原稿が終わりませんでした。そんなことってあるのか、あるんですね。起きたら水曜日になっていました。花粉が終わったと思ったら季節風邪。ずっと、鼻が詰まっております。鼻声。もはや通常の声を忘れてしまっている。

皆さまも、季節の変わり目お気をつけて〜!

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