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海野和男のデジタル昆虫記

昆虫という世界(昆虫写真家への道 10)

昆虫という世界(昆虫写真家への道 10)
2007年01月20日


 日高敏隆先生は昆虫写真家の浜野栄次さんとアサヒグラフという雑誌に「昆虫という世界」を連載しておられた。これは昆虫の世界から人間世界を見るようなアナロジー的なエッセイだ。名作で今でも選書などで入手が可能だと思うので、ぜひ一度読まれることをおすすめする。
 スジグロシロチョウの交尾拒否の写真はその連載で使ってもらえた。雑誌に写真が使われたら、何と原稿料が入ったのだ。4000円で400円源泉徴収。3600円。これは当時のぼくにとっては大きなお金だった。学園闘争で学者になるのはやめたと思った時だから、もう次の日には昆虫写真家になると決めていた。日高先生が大変に自由な発想の方だったので、ぼくはずいぶんと得るところがあった。
 研究のテーマなども押しつけたりしない。相談すれば研究のテーマでも異性関係でも何でも相談に乗ってくれた。偉い研究者でも学生でも等しく接する方だった。特に女の子には優しかったけれど・・・こんな先生に出会えたことをほんとうに幸せなことだと思う。生物学者としてだけでなく教育者としても最高の先生だとぼくは思う。
 写真家になるには、写真の学校に行ったらどうだろうかと日高先生に相談したら、日本の学校は何も教えてくれないよ、もし行くのならスイスの学校なら良いかもと言われた。それでは何年か学校の教師をやって、写真を撮ったらどうだろうかと相談すると、教師になると教条的になる。写真家はそれではいけないというような意味のことをおっしゃった。そうなると残るはバイトをしながら写真を撮るという選択肢しかないわけだ。ぼくはスイスの写真学校は知らないけれど、ほんとうに写真をやりたいなら、学校へ行って学ぶよりも、ほかの勉強をして、写真は実戦で行くのがよいと、今も思っている。
 こんな風に人生には転機やチャンスというものが幾つもある。それに飛び乗るかのらないかは自分自身が決めるしかないのだ。
(つづく)
写真はゴマシジミ。山梨県日野春での撮影。ペンタックスSP 100mmベローズタクマーF4 1971

◎デジタルフォト連載、今月はペルーのチョウ。スペシャルで8ページ。
◎池田書店からHOLGASCAPEという写真集が発売。20名の写真家が6ページずつ旅というテーマで撮影。海野も出ています。1800円

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