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第43回エコ×エネ・カフェ『「激甚化する自然災害に備える」命をまもり、地域と災害と、どう向き合うか』

  • 2023年10月20日
  • 緑のgoo編集部

ハザードマップは被害の予告

早田:
令和2年7月豪雨では、地元が非常に大きな被害を受けました。日本三大急流のひとつ球磨川がまちの中心を流れ、美しい自然の豊かな地域でしたが、大雨による球磨川の氾濫により大きな被害を受けました。災害は、一瞬で人の生活を一変させてしまうのです。

大雨による球磨川の氾濫により大きな被害を受けました。

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早田:
令和2年7月豪雨でここまでの被害が出たのは、みんなが寝ている夜中に大雨が降ったことで、逃げ遅れにつながったこともあります。

みなさんは「未明」が何時頃を指すかわかりますか?深夜0時から深夜3時です。このように気象の用語は、気象庁によって明確な定義付けがされています。これを知っていると天気予報で「未明から明け方にかけて」 と聞いた時に的確な行動が取れますので、ぜひチェックしてみてください。

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早田:
広範囲に降った雨が球磨川一本に流れてしまったという地形的なことも大きかったので、みなさんもお住まいの地域がどういう地形なのかを見ていただきたいと思います。

一方で、行政が事前に出していたハザードマップと実際の被害を比べると、ハザードマップどおりに実際に浸水していることがわかります。平成30年7月豪雨の時に河川の氾濫によって50名を超える方が亡くなられた岡山県倉敷市でも、実際の被害状況とハザードマップの浸水想定が一致しています。ハザードマップを見るということは被害の予告を知る事でありとても大切です。

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「過去最大」が毎年やってくる

早田:
令和2年7月豪雨の後、気象研究所が発表した資料によると、流れ込んだ水蒸気量が過去60年間で1位 、線状降水帯の大きさは 平成29年九州北部豪雨の6倍でした。降水量の総和も平成30年7月豪雨を超えて歴代1位でしたが、この翌年8月の長雨で流れ込んだ水蒸気量と降水量の総和は記録が塗り替えられています。

森:
近年の豪雨は、毎年のように記録が塗り替えられているのですね。

早田:
行政の政策だけでは対応が追い付かなくなっている現状があります。これからは個人や地域単位の小さいコミュニティで自然災害から命を守っていくことを考えることが重要になってきます。
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早田:
水害の後は家ごと洗濯機で回したようになってしまいます。地震の場合、壊れなかったものは被災後にも使えますが、水害の場合は全部がダメになります。電化製品はもちろん布団や洋服なども、どんなに掃除をしてもどんどん泥が出てきてしまい、生活できなくなります。

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8割が直接死ではない「災害関連死」

早田:
避難生活は突然始まります。避難所での生活について具体的な想定をして準備をしていれば、いざという時に困ることが少なくなります。

森:
被災後の困りごとはたくさんあると思いますが、特に何が大変ですか?

早田:
被災直後は情報です。避難所や救助の情報を知りたくても、被災していない知人からの安否確認の連絡で携帯電話の充電がなくなってしまうことがよくあるので、お知り合いが被災された時は気をつけてください。災害時に有効なのはラジオです。様々な情報が飛び交うSNSから正しい情報を精査するのは難しいので、ラジオはとても頼りになります。

早田:
次に困るのは水です。飲み水だけでなく、トイレや歯磨きなどの生活用水も必要です。まわりの目もあって、配られた飲み水を生活用水に使うことは難しいのが現状です。生活用水が十分に確保できないと、歯磨きができない、トイレを控えるために水を飲まなくなります。これが感染症や血栓症を引き起こし、災害関連死に繋がります。

災害関連死とは、避難生活で持病が悪化して死期を早めたり、心身に不調をきたして自ら命を絶ったりするケースのことですが、熊本地震では全体の死者の8割を占めました。8割の方が被災後に亡くなっているのです。

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早田:
災害関連死を防ぐためには避難所の生活環境が非常に重要ということで、避難所・避難生活学会は、避難所に求められる「TKB」を提言しています。Tはトイレ。Kはキッチン、食事です。炊き出しなどの温かい食事を食べると本当に元気が出ます。Bはベッドです。硬いところでは十分な睡眠は取りにくいですし、高齢者のように立ったり座ったりが困難な方にも使いやすいです。

日本の防災の課題の一つは避難所の生活です。それぞれの地域に合った対応を自分たちですることが、命を守ることにつながります。

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早田:
熊本市は水サミットが行われるぐらい地下水が豊富なのに、熊本地震の時は組み上げる手段がなく、給水車に長蛇の列ができ、水を求める大渋滞が起きました。この経験を経て、熊本県内では行政や企業が防災井戸を設置する取り組みが広がっています。子どもでも簡単に使え、電気も限界容量もなく壊れにくいのが特徴です。いざという時にすぐ使えるように、普段からも使われています。

大きな災害というのは必ず起きます。自分や家族、地域のために何ができるのか一人ひとりが考えて備えることが大切です。

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シンキングタイム

早田さんのお話を受け、災害を想定したワークショップが行われました。

早田:
これからあなたの町に大雨が降ってきます。 自分ならどうするかを考え「くまもとマイタイムラインシート (https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/life/97384_148160_misc.pdf)」を書いてみてください。早期注意情報が出た段階と、状況が悪くなってきた段階それぞれで、どのような準備や確認・行動が必要でしょうか?

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早田:
今日は7月4日金曜日。あなたは「明日5日昼前から明後日6日にかけて非常に激しい雨が降る」という情報を知りました。夜になると、雨が降り始めました【警戒レベル1】。この時点でどういう準備をしますか?

そして次の日、朝5時に大雨・洪水注意報が発表されました。傘をさしていても体が濡れるくらいの激しい雨が降っています【警戒レベル2】。お昼になると大雨・洪水警報に切り替わり、避難所も開設されました。もはや傘は役に立ちません【警戒レベル3】。1時間後には土砂災害警戒情報が発表され、携帯電話に避難指示が発表されたとの通知がきました【警戒レベル4】。

そして17時10分に大雨特別警報が発表されました。「特別警報」とは、すでに災害が発生している、あるいはいつ発生してもおかしくないという非常に危険な状態のことです【警戒レベル5】。警戒レベル2〜5のそれぞれのタイミングでどういう行動を取るか考えてみてください。
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ハザードマップを見たことがある方は「こういうリスクがあるからこういうことをした方がいい」と具体的に、自分の家はマンションの上層階など安全なところにあるという方は、停電や断水した時にどういう備えが必要かについても考えてみてください。

ここで参加者がブレイクアウトルーム(小部屋)にわかれて、それぞれの「くまもとマイタイムラインシート」を共有する時間を持ちました。その後、参加者から質問がありました。

参加者1:
避難所が家よりも低いところにあるですが、避難所の方が安全なのでしょうか?

早田:
まずはハザードマップで自宅と避難場所の災害リスクを確認してください。ただ、中小河川や山間部ではハザードマップの整備が進んでいないところもありますのでご注意ください。そのうえで建物の構造によっても避難しなくてよい場合もありますので、地域の状況に応じて臨機応変に判断するといいと思います。

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参加者2:
早田さんは非常食として何を準備していますか?

早田:
子どもがいるので、まずは子どもが食べられるものにしています。特別な防災食を用意してもなかなか食べずに賞味期限切れになってしまう経験があったので、サバ缶フルーツ缶、レトルトカレーや袋麺、パックごはんと海苔など、普段から食べるもので長持ちするものを多めに用意して、使いながら買い足しています。この夏はサバ缶とゴーヤの料理にハマっていました。

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