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第41回エコ×エネ・カフェ『「ローカルファーストが日本を変える」~地域からはじまるサステナブルな社会~』

  • 2023年1月27日
  • 緑のgoo編集部

ローカルファーストを実践するとは?

森:
では、ローカルファーストを実践するには具体的にどうすればよいのでしょうか?

亀井:
例えばみなさんはパンをどこで買いますか?
これは「ここで買うのが良い、悪い」という意味ではありません。パン1つ買うにしても選択肢があるんだよ、ということなんです。そしてその選択によってまちが変わっていくということに気づいていただきたいと思います。

欧米の家庭では、子どもにお金の流れの教育をしていると聞きます。
しかし日本では、安い、早い、便利ということが優先されてしまって価値が軽く見られている傾向にあります。価格は特に重視されますが、価格だけではない価値観を持つことが大事だと思っています。

森:
コンビニや大手スーパーで買うと地域にお金が流れないけれども、個人商店や地元スーパーだと地域でお金が回るということですよね。

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亀井:
お金だけではありません。つくっている人の顔が見えたりつながりができたりします。
コンビニはとても便利ですが、個人商店はそのお店ならではの個性や工夫があり、そこにライフスタイルや豊かな生活が生まれてくるという価値があります。
パンをひとつ買うという小さな行動でも、そういう人たちを応援でき、喜んでもらえる。そういうことを感じてもらえたらと思っています。

森:
買うこと以外にも、日常には様々な選択肢がありますよね。

亀井:
駅までどうやって行くのかというのも選択肢ですね。
車やバスは燃料もかかって空気も汚し、道路も混んでしまう。でも歩いてみたら新しい発見もあるかもしれないし、まちの魅力を見つけられるかもしれません。
小さな選択も積み重なれば大きな変化になるので、ぜひローカルファーストという価値観での選択を意識していただきたいと思うのです。

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亀井:
まち、ひいては国をつくっていくのは一人ひとりの選択と行動だと思っています。みなさんは自分のまちがどのようになったらいいと思いますか?

例えばヨーロッパは自販機やコンビニがないので、喉が乾いたらカフェに入らざるを得ません。するとカフェ文化が栄えて魅力的なカフェが増えます。地元のカフェに行くことで、地域で経済が回って、人との交流もできる。
そういうまちを選ぶのか、便利で簡単な自販機で済ませるまちを選ぶのか。実際、日本でカフェを経営していこうと思ったらなかなか難しいです。

森:
日本は本当に自販機が多いですよね。コンビニもアメリカ発祥ですが、日本で独特な発達をしていますよね。

亀井:
自販機を置くことでカフェの仕事が奪われてしまいます。
合理性が重視されるアメリカではコンビニが流行りそうにも思えるのですが、やはりローカルファーストな価値観を持っている人たちの中でコンビニや自販機の事業を展開するのは難しいのではないでしょうか。

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ローカルファーストの具体例

亀井:
トヨタモビリティ神奈川の海老名店には、ショールームの中に車が1台もありません。
これからの時代、車は売るものではなく地域とのつながりの中から自然に売れていくものだという考えに基づき、地域との交流拠点になろうということで大胆な方向転換をしました。すると売上が5割増しになり、今小田原にも新しいショールームをつくろうとしています。

森:
車のディーラーは地元企業が多いのですか?

亀井:
はい。地元資本のところが多いです。
元々この場所はアツギという企業の跡地で、魅力的な立地なのでコンビニやドラッグストアが借りに来ました。
しかし、そういうところに貸してしてしまうと他と同じようなまちになってしまいますよね。なので、地元の人にしか貸さないという方針でこのディーラーができました。
これも普通のディーラーにするんだったら貸さなかったと思いますが、地域に貢献したいということで意見が合ったのだと思います。貸す側も借りる側もローカルファーストだったんです。

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森:
もしかして亀井さんが入れ知恵したんですか(笑)?

亀井:
関わってはいますが入れ知恵をしたわけではありません。意識の高い企業ではすでにローカルファーストができているということなんです。

森:
売上が大幅に伸びたのも、ローカルファーストの発想があったからこそですね。

亀井:
この高速道路の写真を見て何を感じますか?日本に比べてトラックが少ないと思いませんか?
これはアメリカですが、アメリカは鉄道網が発達しています。鉄道で輸送した方が環境にも優しいですよね。ドイツに行った時には、ライン川などの河川を使った輸送をしているという話を聞きました。

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森:
地産地消やフードマイレージという問題にも関係してきますね。

亀井:
日本ではモノの移動が多すぎると思います。
新潟で獲れた魚を東京に持っていって、そこから新潟に運ぶというようなことも行われています。
産地に行っておいしいものを食べようと思っても、おいしいものはみんな東京にいってしまう。それではダメで、良いものは地域に残して売りにしていかなければいけないんです。
日本は燃料を輸入しているので、余計な移動があるということは海外にお金が流れてしまうということですよね。しかし、流通コストを抑えればその分高く売れるし安く買えます。
この高速道路の写真を見て、ここまで連想できるでしょうか?ローカルファーストというキーワードで連想ゲームのように考えていけば、楽しみながらいろいろな課題解決の方法が見つかると思っています。

ローカルファーストが生み出す地域経済循環

亀井:
人口35万人を擁する埼玉県所沢市で一番大きい商店街では、200店舗のうち地元の店舗が3店舗しかないという状況です。
元々は飛行機のまちとして栄えた所沢で、飛行機のプロペラで「プロぺ商店街」。すてきな名前の商店街なのに地域の魅力が消えてしまったということで、商店街の理事長から相談を受けて所沢のローカルファーストに取り組んでいます。

家業の商売をやめてテナントに貸した方が楽に収入が得られるということで、みなさん貸してしまっているんです。しかし、大変でも地元で仕事をしていくことでまちが元気になり魅力が生まれる。安易に貸すことで、そういう当たり前の循環が壊れてしまいます。
高齢化で後継がいないという問題もありますが、魅力的な仕事であればやりたいという若者も出てくると思います。

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森:
亀井さんはどのようなアドバイスをされたんですか?貸してしまったテナントにいきなり出ていけとは言えませんよね。

亀井:
裏通りから切り崩していく作戦です。メインの商店街は貸してしまっていても、その裏通りや路地などは賃料も安いですよね。現に、茅ヶ崎ではそういう場所で自分の豊かさのためにいろんな商売を始める人がたくさんいます。

高い家賃収入が得られるから貸すのではなく、地元の若者が挑戦したいのであれば応援の意味で少し安く貸してあげる。その一瞬は少し損をしても、それによってまちの魅力が増えればまちの価値も不動産の価値も上がって結果的に得になります。そういう循環を考えて、積み重ねていくしかないと思っています。

森:
そういう意味でも地域経済循環というのは大事なキーワードなんですね。

亀井:
2022年は円安が問題となっていますが、エネルギーや食糧を輸入に頼っている日本では円安によりそれらの代金が海外に流出するインパクトがより大きくなりました。円安で地域経済循環の重要性がさらにクローズアップされていると感じています。

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森:
亀井さんが活動をされている中で、ローカルファーストに対する世間の意識が変わってきたという実感はありますか?

亀井:
国土交通省からも支援を受け全国的にローカルファーストを広げる活動をしている中、意識を持っている方は着実に増えていると感じています。
以前茅ヶ崎でイタリアンレストランをされているご夫婦から「ローカルファーストなことをしたいけれど、日々のことで精一杯なのでできません」という声を聞きました。

しかし、レストランを経営してまちの魅力をつくっているということ自体がローカルファーストを率先してやっているということなんです。
ローカルファーストは、新たに特別なことをすることではありません。日常の中で自分のできることをやる、そのほんの少しのことが地域に役立ってるんだということに気づくと自分の気持ちも豊かになりますよね。そういう心の豊かさをつくっていきたいと思っています。

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森:
僕自身は東京郊外生まれで、今は違うところに住んでいます。生まれ育った家はもうありません。なので自分にとってのローカルという概念が希薄なんです。自分のローカルがどこなのかわからない人は多いと思いますが、そういう人へ何かアドバイスはありますか?

亀井:
移住したり引っ越したりで地域との関わりが希薄だという方も多いと思いますが、やはり住んで生活しているところが第一のローカルだと思います。また、どこに行ってもそこのローカルがありますよね。旅行者としてそのまちに行った時に感じる魅力というのも、またローカルだと思います。

森:
出張に行っておいしいものを食べたいと思った時、チェーン店の居酒屋よりも地元のおっちゃんがやってる飲み屋に入りたい…そんな感覚ですね。

亀井:
もちろん、チェーン店にも良さがあるのでどちらが良いか悪いかということではなく、選択肢を意識して選択の一部を変えていくことが重要だと思っています。
ローカルファーストは0か100で考えるのではなく、とてもフレキシブルで身近なものなんです。例えば知らないまちに旅行するだけでも、そのまちにとってはすごく意味のあることですよね。

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森:
地元に張り付いているだけがローカルファーストではないんですね。

亀井:
究極的には、ある場所にいるということ自体がその場所に対するローカルファーストになります。そしてそこで買い物をして、でもそのお金の使い方についてはちょっと考える。それがローカルファーストなんです。

森:
今後のアクションプランや展望などを教えてください。

亀井:
ローカルファーストを流行語大賞にしたいと思っています!一時的に流行ればいいということではなく、ローカルファーストな行動をクールでかっこいいと思ってもらえることを目指しています。
手応えは感じていますが、まだまだだなと思う時もありますので、まずはひとりでも多くの人に興味を持っていただきたいです。

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