数十年かけてできなかったことは、できないかもって考える方が妥当かも。
使い終わったプラスチックが、すべてきれいにリサイクルされて、再生プラスチック製品に生まれ変わる。そんな理想の循環型社会には、まだ程遠いようです。というか、そんな社会が実現するのかどうか…。
2022年に世界で生産されたプラスチックのうち、リサイクル素材が用いられたのはたった9.5%に過ぎないことが、プラスチックのライフサイクルを世界規模で初めて詳細に分析した研究結果によって明らかになりました。
中国の精華大学に所属するチームが、科学誌『Communications Earth & Environment』に発表した研究結果によると、2022年に世界で生産されたプラスチックの総量はおよそ4億トン。そのうち、再生プラスチックから製造されたのは9.5%の3800万トン弱に留まり、残りの3億6200万トンのうち、98%近くは石炭や石油といった化石燃料由来だったそうです。
プラスチックの生産量は、1950年には年間200万トンほどでしたが、2022年には4億トンと、70年あまりで約200倍にまで増加しており、2050年にはさらに2倍の年間8億トンに達すると予測されています。えっと、プラスチックの生産量って減らすはず…ですよね?
研究チームは、「プラスチック汚染は、環境、経済、公衆衛生に重大な課題を突きつける、緊急かつ深刻化する世界的な問題となっています」と指摘しています。
では、使い終わったプラスチックは、いったいどこに行っているのでしょうか。
2022年に廃棄されたプラスチックは約2億6,800万トンで、そのうち分別されてリサイクル施設に送られたのは27.9%でした。
ここからが問題で、その後の行方を追ってみると、実際にリサイクルされたのはその半分だけ。41%は焼却処分になり、8.4%は結局埋め立て地に送られてしまったそうです。つまり本当のリサイクル率は14%程度しかないと。リサイクル施設とはいったいなんなのか…?
そういえば、日本はプラスチックの焼却処分を「サーマルリサイクル」と呼んでいますよね。そもそもプラスチックがプラスチック以外になったら「リサイクル」じゃないですよね…。
焼却処分に回される割合は年々増加しており、リサイクルの実効性には疑問が残ります。ちょっとだけいいニュースかもしれないのが、1950年から2015年までは、世界全体で発生したプラスチックごみのうち推定79%が埋め立てられていたのに対して、2022年には40%まで減少しており、改善の兆しも見られるようです。
国別で見ると、中国が最大の生産国かつ消費国(国全体で年間8000万トン)ですが、1人あたりの消費量が最も多かったのはアメリカで年間216kg。プラスチックごみの総量も4010万トンにのぼり、その多くは包装材だったといいます。
EU28カ国と日本も、それぞれ1人あたり年間86.6kgと129kgで高い消費量を記録しており、先進国ほど使い捨てプラスチックに依存している現実が浮き彫りになっています。
こうした現状に対応するため、国際社会ではプラスチックごみの削減を目指す条約の策定が進められています。
ところが昨年12月に韓国の釜山で開催された国際的な会合では、サウジアラビアやロシアなどの化石燃料産出国が生産量の上限導入に反対したため、交渉は物別れに終わっています。
その一方で、100カ国以上がプラスチック生産の削減や、特定化学物質や使い捨てプラ製品の段階的廃止を法的に義務づける内容の草案を支持しています。次回の会合は、今年8月にスイスのジュネーブで開催される予定です。
研究チームは今回の調査について、「今後の政策や規制の策定に重要なデータを提供するものです」と強調しています。しっかり活用されてほしいところです。
リサイクルが全然進まないままでプラごみが増えていくのを防ぐには、生産量を減らすしかないと思うのですが…。
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Reference: Houssini et al. 2025 / Communications Earth & Environment