牧さんからの話題提供を受けて、これからはワールドカフェでの対話の時間です。「問いに意識を集中して、意味を追究する会話、対話(ダイアログ)を楽しんでください」という森さんの言葉を受け、テーブルごとに、与えられた問いについて話し合っていきます。
世界の情勢が変わるという意見がありました。
「今は日本のエネルギー自給率はとても低いですが、この技術があれば、日本がエネルギー輸出国になることも十分ありえます。もしそうなると、世界の中の日本のポジションも大きく変わってくるでしょう」「化石燃料を巡る紛争状況が解決に向かうかもしれません」「電気が普及していない途上国にも、電気が行き渡りやすくなり、産業が活性化しそうです」「新しい技術移転が進み、エネルギー業界が新しい形で活性化するかもしれませんね」
無線送電が前提となる社会の風景をイメージする意見もありました。
「送電線がいらなくなって、特に都市部で、景観がよくなりそうです」「ガソリンスタンドや石油タンカーといった設備は減っていきそうです」「派生技術の開発が進み、電気供給の制約を超えた、これまでになかったタイプの製品が世の中に普及しているような気がします。今では想像もつかない新製品がリリースされているかも」「電磁波を避けるための技術が発達していそうですね」「災害地域にエネルギーが送れるようになり、人命救出などの作業をしやすくなりそうです」
新しい問題が台頭する可能性を指摘する声もありました。
「宇宙は広大とはいえ、低コストで効率良く設置できる場所に条件はあるだろうから、宇宙空間の奪い合いが起こるのではないでしょうか」「新しいタイプの戦争やテロにつながるかもしれません」「宇宙太陽光発電のような高度の技術を導入できる国は限られていると思うので、国家間の格差がますます広がってしまうかもしれません」
5年後の2020年は東京でオリンピックが開催される年。もしこの時までに宇宙太陽光発電が完成しているなら、是非、世界の人に積極的にアピールしたいという意見も、複数のテーブルであがりました。
一人を同じテーブルに残し、メンバーを入れ替えて、2つ目の問いに移ります。
当初定めた予算や事業計画の範囲内とする現実的意見がありました。
「研究がスタートする時点で、実現可能性や事業性を十分検討するはずだと思うので、その計画に沿って行うのが妥当だと思います」「新しい技術の出現などの理由で開発費が低減することもあると思うので、数十年スパンの長期計画を立てつつ、ある程度中長期的にプランを見直す必要がありますね」「もし計画を延長する場合は、それなりの正当性を周囲に説得する必要があります。その説得力や、社会的評価を見て判断するべきかもしれませんね」
期限を定めるのではなく、あくまで社会への貢献度や社会的価値を軸に検討すべきとの意見がありました。
「たとえ巨額の投資が必要で時間がかかったとしても、そのことで解決される課題が大きかったり、人類にとって価値があることならば、追及すべきだと思います」「エネルギーや宇宙開発は、一般企業の研究開発と違って、国家戦略上の問題として検討され、評価されるべきことです。評価の物差しが違うことを念頭に置く必要があるのではないでしょうか」「国の予算を使うからには、世論の支持が必要不可欠です。研究にどれくらいの価値があるか、国民を交えて、しっかり議論を積み重ねることが必要だと思います」
その他「ある天才的な研究者のリーダーシップで行われる研究もあると思うので、研究者の寿命が持つ限り、というのが現実的かもしれません」「先が見えないとモチベーションが高まらないので、研究者の結束を高めるためにも、タイムリミットは必要だと思います」といった意見がありました。