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「いぶき」 詳細解説

読み:
いぶき
英名:
IBUKI(GOSAT:Greenhouse Gases Observing SAtellite)

二酸化炭素(CO2)やメタンなど温室効果ガスの排出増加による地球温暖化の進行は、地球の気候変動に影響を与え、生物多様性の損失などさまざまな環境危機を引き起こしている。こうした状況に歯止めをかけようと、1997年に京都で開かれた気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された「京都議定書」では、温室効果ガスの排出量を2008年から2012年までの平均で1990年の水準より6~8%削減することが先進国に義務づけられた。

世界各国が国際政治や外交の場で温室効果ガスを削減するための努力を続けている一方で、最先端の科学技術を用いて地球の現状を観測することにより、地球温暖化問題を解決に導こうという取り組みが進められている。その中でも、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって提案された「全球気候観測システム(GCOS)」は、地上や海洋、そして宇宙における地球環境の観測を各国に求めている。日本はこの要請に応えて、CO2やメタンなどの濃度分布を、衛星により宇宙から観測するGOSAT(ゴーサット)プロジェクトを、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立環境研究所環境省の共同により進めた。そして、世界初となる温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」を、2009年1月23日に種子島宇宙センターから打ち上げた。

「いぶき」という愛称は「地球の息づかい=息吹(いぶき)であるCO2を観測する衛星」を意味するもので、公募に寄せられた1万2000件を超す候補の中から選ばれた。形状は2翼式太陽電池パドルをもつ箱形をしており、通常は3.7m×1.8m×奥行2.0mの大きさだが、太陽電池パドルを開いた時の両翼端間の長さは13.7mにもなる。打ち上げ時の重さは約1750kgだ。「いぶき」にはCO2とメタンの観測を実施する「温室効果ガス観測センサー」と、温室効果ガス測定の誤差要因となる雲やエアロゾルを観測する「雲・エアロゾルセンサー」の2種類のセンサーが搭載されている。

「いぶき」の打ち上げは「H-IIAロケット15号機」により、三菱重工業が提供する打ち上げ輸送サービスを使って行われた。ロケットから分離された後は地上約666kmの高度を飛行し、地球を観測しながら約100分で一周し、3日間かけて再び同じ軌道に戻る。この軌道を「太陽同期準回帰軌道」という。「いぶき」は初期機能の確認などを済ませた後、2009年5月に陸上の晴天域におけるCO2とメタンの濃度についての初解析結果を得た。また、同年7月に日本で46年ぶりに観測された皆既日食の際に地球上にできた月の影を撮影し、宇宙からの日食撮影に成功。さらに9月には、陸上と海上の晴天域におけるCO2の平均濃度分布を示す「全球分布図」を公開した。

「いぶき」が収集したデータは、地球温暖化の原因物質に関する科学的な理解を深めるのに役立てられるほか、地球の気候が将来どのように変化するかという予測などに用いられる。「いぶき」が2012年12月までの3年半に大都市やその周辺で得たデータを解析した結果、世界の大都市などでCO2濃度が周辺よりも高い傾向が見られた。「いぶき」は、大都市などでの化石燃料の消費によるCO2濃度の上昇をとらえている可能性が高いことがわかっている。2017年度には、後継機の「GOSAT-2」が打ち上げられる予定だ。

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