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「肥料」 詳細解説

読み:
ひりょう
英名:
Fertilizer

植物が成長するには、10種類以上の微量元素が必要だ。土の中には金属類を含めて多くの元素が存在するが、中でも吸収量が多い窒素(N)、リン(P2O5)、カリウム(K2O)の3種類は欠乏しやすいため、これらの3元素、またはそのいずれかを含む肥料を人為的に施す必要がある。これを施肥といい、これらの3元素を肥料の3要素と呼ぶ。肥料は大きく1) 天然肥料(有機肥料)、2) 化学肥料(無機肥料)の2種類に分けられる。2006年の世界における肥料の消費量は次のとおり。1) 窒素:約1億t、2) リン:3950万t、3) カリウム:2966万t。また、同じく日本における消費量は次のとおり。1) 窒素:約61万5000t、2) リン:63万8000t、3) カリウム:50万8000t。

わが国では、1950年にできた「肥料取締法」により肥料の生産や輸入・販売が厳しく規制されている。同法は肥料について次のように定義している。1) 植物の栄養に役立てられるもの、2)土壌に化学的変化をもたらすために土地に施されるもの、3) 植物の栄養に役立てられることを目的として植物に施されるもの。また、肥料は米ぬかや魚かすなど農家が長い間使ってきた「特殊肥料」と、それ以外の「普通肥料」に大別される。特殊肥料は農家が自給してきたもので、品質を経験や五感などによりある程度判断できるため、安全性に問題がないとされる。肥料を生産、輸入・販売する場合は、種類に応じて農林水産大臣か都道府県知事に登録や届出をしなくてはならない。また、新たに特殊肥料を製造・輸入したり販売したりする場合も、都道府県へ届出る必要がある。

肥料について成分面からみると、化学肥料は無機質の原料をもとに工場で大規模に加工、化学合成されてつくられる肥料で、窒素、リン、カリウムのいずれかを含むものと、それらの成分を2種類以上含む複合肥料がある。天然の肥料に比べて成分を多く含み、必要な量だけ選んで使用することができ、効果が出るのが早いなどの利点がある。窒素肥料には硫安や石灰窒素などが、リン酸肥料には過リン石灰などが、カリ肥料には輸入カリと国産カリがある。

一方、有機肥料は植物や、動物の排泄物などを加工したり発酵腐熱したりしてつくられ、材料によって緑肥や堆肥、ふん尿、魚肥などさまざまな種類がある。使う原料により成分量が決まってしまうため肥料としてのバランスはよくないが、化学肥料と違ってゆっくりと効く点が特長だ。また、稲作を中心とする社会システムが長く続いてきた日本では、独自の農耕文化が育まれてきた。特に戦乱の世が終わった江戸時代には、都市で発生した生ごみやし尿などの有機物が農村で肥料として用いられ、有価で取り引きされていた。また、し尿を腐敗させずに熟成して肥料として農地で利用するため、畑の脇に穴を掘ってふたを付けた「肥だめ」が利用された。

都市で発生した不要物を農業に生かす取り組みは、現代でも行われている。2001年に施行された食品リサイクル法では、食品関連事業者による食品廃棄物の再生利用を求めており、2007年度に再生利用された用途で最も多かったのは肥料化だ(37%)。同法はまた、再生された堆肥などで育てた農産物を商品として供給する「リサイクル・ループ」という仕組みも推奨している。一方、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」では、化学肥料などを原則として3年以上使わず堆肥などを用いた田畑で栽培され、収穫されたもののみを「有機農産物」として、「有機」や「オーガニック」の表示をすることを認めている。

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