ジオパークは、地殻変動など地球が活動していた歴史を示す遺産を見られる自然公園のことで、その名前は、地球や大地を意味する「ジオ」と「パーク(公園)」を組み合わせた造語だ。山や川の中に入ってよく観察することでその成り立ちや仕組みを知り、地層や深海、宇宙を含めた生態系と人間生活との関係性などについて考えることができるため、環境や文化教育の場としても価値が高い。世界遺産と違って、自然遺産を保護しながら教育や科学の普及などに活用していくという目的をもつ。
ジオパーク活動は、ユネスコが支援して2004年に設立された世界ジオパークネットワーク(GGN)によって世界中で推進されており、世界ジオパークとして認証された地域は2011年9月時点で27カ国・87地域ある。主な世界ジオパークとしては、恐竜の足跡が残るドイツのテラヴィタジオパークや、マングローブの林を見ながら川下りを楽しめるマレーシアのランカウイジオパークなどがある。一方、国内には、北海道の洞爺湖有珠山ジオパーク、新潟県の糸魚川ジオパーク、長崎県の島原半島ジオパーク、京都・兵庫・鳥取の3府県にまたがる山陰海岸ジオパーク、そして2011年9月に認証された高知県の室戸ジオパークの5カ所がある。
ジオパークには地質や地形、歴史などを見学する拠点となる博物館などのジオサイトが整備され、ジオサイトをめぐるジオツアーが行われている。世界ジオパークとして認証されるには、地層などの地質遺産が多くあることに加えて、考古学や生態学などの面で重要な価値をもつ場所を含むはっきりと境界のある地域であることが求められる。また、地方自治体などによる運営体制や財政計画が整っていること、地域の持続可能な発展を育成する取り組みがみられることなど、さまざまな条件を満たす必要がある。
このため、ジオパークとなるには、地域の旗振り役が自治体や商工会・観光組織・博物館などのネットワークを築き、地域協議会のような主体を立ち上げて活動を始めることが肝要だ。たとえば、日本のある地域がジオパークを目指そうと思ったら、日本ジオパークネットワーク(JGN)に参加した上で、日本ジオパーク委員会の審査を受けて通過し、日本ジオパークとして認められる必要がある。その後、さらに国際的な活動を行うなどして実績を重ね、JGCの推薦を得てGGNによる審査を通過すれば、世界ジオパークとして認められる。
近年、ジオパーク活動には環境や教育だけでなく防災の視点も必要であるという考え方が主流となっている。2008年ドイツで開催された第3回ジオパーク国際ユネスコ会議では、地質災害に関する知識の共有にジオパークが役に立つという趣旨を盛り込んだ宣言が採択された。第5回の同会議は、2012年5月に島原で開催される。