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「南極」 詳細解説

読み:
なんきょく
英名:
Antarctica

南極は地球の自転軸の南端、南緯90度にあり、一般的には、南極に位置する大陸を指して南極と呼ぶ。南極はそのほとんどが手つかずの状態で、過酷な自然環境の下で多くの生物が暮らしており、人類にとっても貴重な財産となっている。面積は約1390万平方kmあり、地球の陸地面積の約12分の1を占め、日本の国土の約37倍にもなる。また、95%以上が平均厚さ2450mの氷床に覆われており、体積は大陸周辺の棚氷を合わせて3000万立方kmを超え、地球上の真水の約7割に達する。氷床には、南極ができた当時の降雪時における空気が気泡として閉じ込められている。その「アイスコア」を掘削採取して解析することで、過去の大気組成やその経年変化、そして気候変動との関連性を探ることができる。

南極大陸は、経度線の0〜180度を境界として東半球側が「東南極」、西半球側が「西南極」と呼ばれる。19世紀の探検時代に多くの探検家が南極を訪れ、日本からは白瀬隊が1912年に南緯80度05分、西経156度37分の地点に到達した。20世紀に入り、各国による南極調査は活発化したが、その一方でペンギンが食料や船の燃料にされたり、アザラシが毛皮用に乱獲されたりするなど、乱獲ともいえる行為が繰り返された。

このような自然環境の破壊につながる行為を防止するため、日本やアメリカ、イギリス、フランスなど12カ国によって1959年12月に「南極条約」が調印され、1961年に発効した。南極条約では、1) 南極の平和的利用(軍事基地、軍事演習の実施などの禁止)、2) 科学的調査の自由と国際協力の推進、3) 領土権や請求権の凍結―などの事項が盛り込まれた。そして、この条約の規定を守り、目的を促進するために「南極条約協議会会議」が開催され、南極の環境保護や観測にあたっての技術的な問題などが協議されている。南極条約の締約国は2009年9月現在で47カ国だ。

また、南極で調査活動を行う国の中には、領土権を主張する「クレイマント」と呼ばれる7カ国(英、ノルウェー、仏、豪、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン)と、領土権を主張せず他国の主張も否認する国(ノン・クレイマント:米、ロシア、日本、ベルギー、南アフリカなど)がある。ただし、米ロは領土権の主張はしないが、過去の活動を特別の権益として留保する姿勢を取っている。

このように各国の思惑がある一方で、南極にも環境破壊の波が押し寄せてきている。ペンギンやアザラシからポリ塩化ビニール(PCB)などの化学物質が検出されて問題になった。また、地球温暖化の影響で氷山が南極大陸から切り離されて海を漂流し、ペンギンの生息環境を脅かすといった事態も発生している。さらに、各国の南極観測隊が持ち込み、取り残された雪上車などの廃棄物による環境汚染も心配されている。日本の観測隊は1998年の越冬隊から毎年100t以上の残置廃棄物をもち帰っている。

南極の環境保護について、日本は「南極地域の環境の保護に関する法律」に基づいてさまざまな施策を行っている。同法には、1) 高山資源の採鉱などの禁止、2) 生息・生育している動物・植物の保護、3) ウィルスを含む生きた動物のもち込み禁止、4) ポリ塩化ビニール(PCB)やポリスチレン性の梱包材などの持ち込み禁止、5) 廃棄物の適正管理―などが盛り込まれている。また、学術研究など、あらゆる活動に関する環境評価の実施・確認手続きが必要とされている。近年増加している南極への観光ツアーにおいても手続きが必要となる。
一方、太陽光に含まれる有害な紫外線を吸収して地球上の生物を守るオゾン層が、フロンなどの化学物質によって破壊されて問題となっているが、南極上空では毎年8〜12月頃にオゾン濃度が極端に減った「オゾンホール」が観測されている。オゾンホールの面積は2008年9月に2650万平方kmに達し、南極大陸の面積の約1.9倍にもなった。このように、南極は人間社会から遠く離れてはいるが、さまざまな意味で環境破壊の指標となっている。

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