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「フード・セキュリティー」 詳細解説

読み:
ふーど・せきゅりてぃー
英名:
Food Security

フード・セキュリティーは、直訳すると「食料安全保障」となる。農林水産省によると、食料安全保障とは、「予想できない要因によって食料の供給が影響を受けるような場合のために、食料供給を確保するための対策」だ。事実、日本の食料自給率は約39%で先進国の中では最も低い。食材の多くを輸入に頼る日本は、地球温暖化などにより海外に問題が起きるだけで、たちまち食料危機に直面するという意見もあるだけに、フード・セキュリティーの確保は日本にとって重要な課題だ。

一方で、フード・セキュリティーという言葉の定義や範囲は広く、同省の食料・農業・農村政策審議会施策部会(現在は企画部会に統合)における議論の中で、委員からは次のような指摘がなされている。「世界のフード・セキュリティーといった場合には、当然、貧困の問題であり、今現在の食料の確保が問題である(中略)、しかし、日本で食料安全保障という言葉が我が国の問題として使われる場合には、むしろ将来、あるいは不測の事態が起こったときのことであって、今現在食料に困っているという状態ではない」。ちなみに、日本で「食の安全・安心」を表す言葉としてはフード・セーフティが用いられることが多い。

今世紀に入り、フード・セキュリティーという言葉が注目されるきっかけとなったのが、環境や食糧の問題について警告を発し続けてきたアースポリシー研究所長のレスター・ブラウン氏が、「世界のフード・セキュリティーが崩壊に近づいている」と同名の著書で警鐘を鳴らしたこと。ブラウン氏が世界のフード・セキュリティーの危機を訴えているのは、人類による生産活動が地球の自然システムの限界を超えつつあるとする、長年にわたる氏の持論に基づくものだ。

2007年5月に東京で行われたシンポジウム「食料 vs エネルギー ―穀物の争奪戦が始まった―」では、ブラウン氏をゲストに招き、バイオ燃料と食料をめぐる国内外の動きと今後の対応などについて論議が交わされた。基調講演「バイオ燃料が食卓を脅かす」の中でブラウン氏は、原油価格の高騰と高値の安定を背景としたバイオエタノールなどバイオ燃料の増産を受けて、食料とエネルギーとの間で、トウモロコシなどの穀物を奪い合う構図が明確化している現状を解説。「車の便利さを保持し続けたいと思っている8億の人々」と、「生き延びたいと思っている20億人の貧困層の人々」との間で大規模な競合が起きており、バイオ燃料の需要増が食料問題を深刻化させると警告した。

このように、フード・セキュリティーは、日本の食料安全保障や世界の貧困対策の枠を超えて、エネルギーや環境などの問題をも内包した国際的な課題だ。2008年7月に開催された北海道洞爺湖サミット(G8)では、世界のフード・セキュリティーに関する首脳声明が採択された。その中で、バイオ燃料の持続的な生産・使用に関する施策と食料安全保障の両立を確保することなどが確認された。具体的には、非食用植物などから生産される「第2世代バイオ燃料」の開発と商業化を加速することが必要であるとしている。

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