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「エコミュージアム」 詳細解説

読み:
えこみゅーじあむ
英名:
Ecomuseum

エコは環境、ミュージアムは博物館のことだから、エコミュージアムは環境や自然を知る博物館のことかといえば、それはきわめて一面的なとらえ方だ。日本エコミュージアム研究会が2001年にまとめた「エコミュージアム憲章2001」によると、エコミュージアムは「環境と人間との関わりを探る博物館システム」と定義されている。同憲章ではまた、「ある一定の地域」において、「住民の参加」により、「研究・保存・展示を行う常設の組織」であり、「地域社会の持続的な発展に寄与するもの」であるとも定義している。このことからも、エコミュージアムが、単なるハコモノの自然博物館ではなく、地域とその自然、文化、歴史などすべてを対象とした、自由で柔軟な博物館の仕組み全般であることがわかる。また、発祥の地とされるフランス語では「エコミュゼ」という。

また、環境白書によると、国際博物館会議(ICOM)の元会長でエコミュージアムの提唱者とされる博物学者のアンリ・リビエール氏は、エコミュージアムを、「行政と住民が一体となって、その地における人間と自然の関わりあいの歴史、生活、産業、習慣を写し出すような表現力を持たせるシステム」と定義している。また、文部科学省の資料によれば、そのほかに次のような定義を示している。1) 住民が自分の住む地域の歴史、文化、生活などを理解するとともに来訪者に自らが生活する地域を理解してもらうための場、2) 人間が伝統的社会・産業社会の中で自然と関わって生活してきたことを理解する場、3) 情報と批評的分析の役割を果たすところ、4) 歩いたり、見学したりすることができる恵まれた空間、5) 外部研究機関と協力しながら地域研究に貢献し、専門家を育成する「研究所」、6) 自然遺産や文化遺産を保護し活用を支援する「保存機関」、7) 地域研究や遺産の保護活動に住民の参加を促し、将来、想定される地域の問題に対し理解を深める「学校」。

エコミュージアムの本場とされるフランスには、さまざまな取り組みが見られる。経済産業省が2003年にまとめた報告書によると、その1つ「エコミュゼ・ブレス・ブルギニョン」では、古城を活用した中核施設と、「小麦とパン」、「ぶどうとワイン」などのテーマを産業遺産施設により展示。衛星施設で木ぐつ工房の見学やわら椅子づくりをすることができる。また、「エコミュゼ・アルザス」は、子どもたちが村に宿泊し、家畜の世話や木工、料理などを分担するなど、体験プログラムが充実している。同地域内には19世紀様式のロッジや人形劇場などの施設が充実し、年間約40万人が訪れているという。このほか、イギリスやノルウェー、イギリスなど各国に多くの事例がある。

一方、日本にも、エコミュージアムを実践している地域が数多くある。全国で初めてエコミュージアムの考え方をまちづくりの軸に据えた山形県朝日町では、エコミュージアムを「新しい生活環境観」と定義。1991年にまとめた「エコミュージアム基本構想」では、エコミュージアムについて、「朝日町民にとって見学者であると同時に出演者であり、町はまるごと博物館になり、住民は誰でも学芸員になる」と宣言している。また、2000年にエコミュージアムのコアセンター「創遊館」を設置し、周辺の関係施設と連携して、学習会や地域産業の紹介、イベントなどを行っている。2005年には政府の地域再生本部から地域再生計画に認定された。さらに、神奈川県川崎市(多摩川流域)や、福井県勝山市、熊本県南阿蘇村、兵庫県西脇市などでも、エコミュージアムによる地域の振興や再生を図る取り組みがある。また、三重県の宮川流域ルネッサンス協議会では、宮川流域を「生きた博物館」として、エコミュージアムセンターを開設するなどして、全国に同流域の自然環境の豊かさを発信している。

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