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「カーシェアリング」 詳細解説

読み:
かーしぇありんぐ
英名:
Car Sharing

日本の乗用車の保有台数は、2005年末現在で5700万台を超えた。環境省によると、同年度の温室効果ガス排出量は、二酸化炭素(CO2)に換算して約13億6000万トンで、そのうち自家用乗用車からの排出量は減ってはいるものの全体の約1割を占めるといわれている。地球温暖化の進行を食い止めるためには、自動車の使用を減らして、公共交通を利用することを促すといった施策が必要とされている。その手段のひとつとして、自動車を1人の人だけで使用するのではなく、複数の人が組織的に共同で利用するのがカーシェアリングだ。カーシェアリングには、業務用と個人利用、その双方を対象とするものなどがある。また、市街地に車両置場をつくって会員方式で運営する仕組みや、マンションなどの集合住宅の付帯サービスとして導入するものなど、さまざまな事業形態がある。

仲間同士でお金を出し合って車を共同保有する仕組みは、1940年代から行われていたと言われている。当初、組合や非営利組織として発足したものが、会社となってカーシェアリングを事業として運営していることが多いようだ。こうしたカーシェアリング事業は、欧米で普及が進んでいる。カーシェアリングについて最も長い歴史を持つスイスでは、民間と行政の事業が整理・統合されつつも、公共サービスとして運用されている。また、ドイツには数百のカーシェアリングを運営する会社があり、イギリス、フランス、イタリア、ベルギーなどの国でも独自の発展をしながら普及している。さらに、EUでは環境や都市交通対策として、カーシェアリングに関する社会実験を何度も行っている。一方、アメリカ、カナダなどの北米大陸では、大手や中小のさまざまな事業者がカーシェアリング事業を運営しているという報告がある。

日本では、カーシェアリングは、次世代交通システム(ITS)の実用化などを主な目的として、20世紀末に始まった。わが国初のカーシェアリング事業会社は、2002年に神奈川県で設立され、同年に福岡市がパイロット事業を行うなど、21世紀に入り、実用化に向けた官民の動きがようやく本格化した。福岡市のパイロット事業は終了後、民間事業者に引き継がれている。また、神奈川県はカーシェアリングを普及するため、2006年から県の土木事務所で、職員が公務にカーシェアリングを利用している。さらに、近年、カーシェアリング事業者間での会員相互利用の試みが、東京、神奈川、名古屋、大阪、神戸などで行われている。

カーシェアリングによる環境負荷の低減効果については、カーシェアリングをはじめ、環境にやさしい交通システムのあり方を提案している交通エコロジー・モビリティ財団(交通エコモ財団)が2006年に詳細な報告書をまとめている。それによると、内外の自動車共同利用の実験や事業における環境負荷低減効果を試算や、大手カーシェアリング事業者の利用者に対するアンケート調査などを検討した結果、カーシェアリングの導入により、1) 自動車走行距離が減る、2) 利用者1人あたりのCO2削減効果が大きい、などの利点があることがわかった。また、費用については、利用者1人あたり毎月平均で3万8000円の節減になることもわかった。このように、カーシェアリングは社会全体の環境負荷を減らすとともに、家計にもよい変化をもたらす手法である。また、京都議定書目標達成計画では、運輸部門のCO2排出を減らすため、カーシェアリングなどの実施により公共交通機関の利用を促進することが必要であるとしており、早期導入が望まれる。

しかし、日本ではカーシェアリングに対する認知や普及の度合いは低いのが現状だ。交通エコモ財団は、前記の報告書の中で、欧米でカーシェアリングが普及した理由として「明確な政策的位置づけの下での行政による支援と、公共交通事業者等との連携・協力」などをあげている。また、同財団は、海外では公共交通事業者が会員の獲得や共通カードの発行などの点で協力しているが、日本にはカーシェアリング事業者と公共交通事業者の連携や協力例が無いことも指摘している。一方、マンション立地の際にサービスとして組み込むことが効果的であるため、駐車場の立地など関連する法規制の見直しも視野に入れるべきだ。カーシェアリングを地球温暖化や大気汚染を防止するための環境対策として政策に位置づけ、官民が協力して導入を進めていくことが必要だろう。

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