カーボンフットプリントは、人間活動が炭素の循環や地球温暖化に与える影響を把握するのに用いられる指標だ。二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの削減に向けた取り組みの一環であり、日本語に直訳して「炭素の足跡」とも言われる。商品やサービスの原材料調達(資源の採掘など)から廃棄、リサイクルに至るライフサイクル全体を通じた二酸化炭素(CO2)の排出量を、商品などに直接表示するわかりやすさから、CO2排出の「見える化」を進める手段として注目されている。カーボンフットプリントの流れは主に次のようなものだ。1) 対象商品・サービスを決定、2) 軽量化や小型化などによりCO2を削減できるポイントを抽出、3) 商品やLCAの範囲など、CO2排出量を算出する基本条件を決定4) 関連データの収集、5) CO2排出量を算出、6) 統一マークなどによりCO2排出量を表示。
カーボンフットプリントには、商品への表示によって、事業者の温暖化対策を消費者にアピールできるのと同時に、消費者自身のCO2排出量に関する自覚をうながす効果がある。また、LCAの手法を基本としているので、企業が導入しやすい。さらに、CO2排出量を正確に測定する必要があるため、カーボンオフセット(炭素の相殺)の普及にも役立つ。ちなみに、よく似た言葉のエコロジカル・フットプリントは、人間の活動によって消費される資源の量を評価して、人間の生活や事業などが自然環境に依存している状況を示すもので、より広い指標と言える。
カーボンフットプリントに関する国際的な動向を見ると、国際標準化機構(ISO)の技術委員会(TC207)が、カーボンフットプリント算定基準の規格化に向けた検討を始めている。また、カーボンフットプリント発祥の地である英国では、官民が協力して独自規格の「PAS2050」を作成し、民間企業が試験プロジェクトを行っている。さらに、韓国は2008年からカーボンフットプリント算定・表示・認証制度のモデル事業を開始する予定だ。このほかにも、フランスやドイツなどの国々が独自の取り組みを始めている。日本でも、2008年6月に発表された「福田ビジョン」で、カーボンフットプリントの制度化を進めていくことが表明された。
経済産業省は、カーボンフットプリントを国内で制度化し、普及していくため、「カーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会」を2008年に設置。指針案を公表した。その中で、とくに日用品など非耐久消費財の分野でカーボンフットプリントの導入が期待されるとしている。また、カーボンフットプリントを制度として運用していくには、ラベルの共通化などのルールづくりや、CO2排出量を算定する手法の確立、第三者による認証など制度の信頼性を担保する仕組みづくりなどが重要になるとしている。同省は、同年12月に開催される環境の総合展示会である「エコプロダクツ2008」で、カーボンフットプリントを表示した商品を展示するなど、算定・表示の実験を行う予定だ。これに伴い、統一マークも決定した。
一方、環境省は、商品・サービスに関して、カーボンフットプリントを含めた「見える化」全般に関するガイドラインの策定を目指すとしている。2008年9月には、英国環境・食料・農村地域省との間で、カーボンフットプリントの算定などに関して協力していくことを宣言した。また、国土交通省が物流分野について、農林水産省が農林水産物や木材などについて、それぞれカーボンフットプリントの算定・公表に関する仕組みづくりを検討、着手している。