地球温暖化は、世界的な天候不順、海水面の上昇、作物への影響など環境や気候にさまざまな変化をもたらすと考えられており、その原因とされる二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減が世界的な課題となっている。1997年に開催されたCOP3(地球温暖化防止京都会議)では、京都議定書によって、1990年当時の温室効果ガスの排出量を基準に、2012年時点で日本が6%、EUが7%、アメリカが8%を削減することが数値目標として決められた(ロシアは0%)。2005年にロシアが批准したことによって京都議定書が発効し、世界的に温室効果ガスを削減しようとする努力が続けられている。
排出量取引(排出権取引ともいう)は、ある国が目標以上の温室効果ガスの削減に成功した場合や、反対に目標数値に足りなかった場合に、目標の超過分と不足分を国同士が市場で取り引きできる仕組みだ。京都議定書で「共同実施」「クリーン開発メカニズム」とともに採択された。たとえば、A国が温室効果ガスの削減努力をして目標数値をクリアし、B国が目標に達しなかった場合、B国はA国から排出量取引によって不足分を購入できる。排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズムのように、間接的な方法でCO2を減らす方法を京都メカニズムと呼ぶ。
日本の場合、1970年代の石油ショックの頃から省エネ技術を開発し、有害物質の削減にも努めてきた結果、京都議定書の基準となる1990年にはすでに各企業、工場など温暖化防止策がとられていた。このため、産業界からはこれ以上の省エネによるCO2などの削減は難しいという要望が強くあり、6%の削減を実現するためには、排出量取引のような仕組みを国として制度化する必要が生じた。環境省は、2005年に企業の自主参加による国内取引市場を実験的に立ち上げ、翌2006年から開始した。また、2008年には排出量取引制度の試行運用を開始。エネルギーに由来するCO2を対象として、企業が自主的に削減目標を設定して、排出枠やクレジットを口座上で取引する仕組みが導入された。