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「ステークホルダーダイアログ」 詳細解説

読み:
すてーくほるだーだいあろぐ
英名:
Stakeholder Dialog

現代社会においては、企業が事業活動を行うにあたり、利益の追求や株主への配当だけでなく、消費者や取引先、従業員、地域社会、国際社会などのあらゆる利害関係者(ステークホルダー)に対して、社会の一員としてふさわしい責任を果たすことが求められる。この考え方を企業の社会的責任(CSR)といい、ステークホルダーとの関係を重視することは、企業価値を高め、持続可能な経営を行っていく上で欠かせない取り組みとなっている。その一環として、企業経営にステークホルダーの意見を反映するために、いろいろな人から双方向の形で話を聞く、ステークホルダーダイアログ(対話)を行う企業が増えている。

ダイアログとは「対話」を意味する言葉だ。できるだけ多くの関係者を集めて話を聞くという意味で、マルチ・ステークホルダー・ダイアログと呼ぶこともある。多くの企業によるCSRを支援してきたIIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)代表の川北秀人氏は、ダイアログの3原則として、「論点の具体性」、「取り組みの主体性」、「検証する継続性」の3つをあげている。ダイアログは環境・CSR報告書に掲載するための形式的なものではなく、企業経営を改善するための場であり、具体的な提案や指摘が出るようなテーマ設定が必要となる。また、ダイアログ自体が目的化しては意味がなく、対話を通じて明らかになった問題に答えるかが重要だ。さらに、対話は一度きりではなく継続して行うからこそ、関係者と交わした約束を果たすことができる。

多くの企業が、ダイアログを利害関係者とのコミュニケーションを深める手法として活用している。大手自動車メーカーのトヨタは、2001年からダイアログを毎年開催し、参加者から寄せられた期待や意見を企業経営に役立てている。衛生陶器大手のTOTOは、2004年から自社事業とかかわりの深い水資源などをテーマとしたダイアログを実施し、節水型住宅設備機器の開発などに生かしている。金融大手の三井住友フィナンシャルグループは、2007年からダイアログを行い、低炭素社会の実現に向けた金融の役割や、草の根からのグリーン・ニューディール、環境配慮融資評価の拡大などについて、多くの利害関係者の意見を得た。

NTT グループは、CSRにおける重点項目の策定や、新たな環境ビジョン、多様な働き方、環境負荷の低減、情報セキュリティ、ユビキタス社会の実現など、さまざまなテーマでダイアログを行ってきた。また、環境gooには東京ガスによるダイアログを詳しく紹介した特設ページもある。環境省と(財)地球・人間環境フォーラムは、事業者による環境コミュニケーションの取り組みを促すとともに、質の向上を図ることを目的とする表彰制度として、環境コミュニケーション大賞を毎年実施している。

2010年11月に発効したISO26000は、あらゆる組織が持続可能な発展に貢献することを実現するため、マルチ・ステークホルダー・プロセスで策定された社会的責任(SR)に関する手引書だ。そこでは、利害関係者を特定して対話を行い、双方向のコミュニケーションをとるエンゲージメントが主要な概念とされている。今後のステークホルダーダイアログは、ISO26000に基づいて行われる場合が増えるだろう。ダイアログは、企業だけでなく政府やそれに近い主体が政策を進める過程で開催されることもある。とくに、ODAなど国際的な支援にさまざまな国や地域の利害関係者の意見を反映させ、評価する手法として活用されている。

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