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「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」 詳細解説

読み:
にさんかたんそかいしゅう・ちょりゅう
英名:
Carbon Dioxide Capture and Storage

2008年7月の北海道洞爺湖サミットや関連会合の場で、各国は、排出された二酸化炭素(CO2)を大気中に出さないで地下や海洋などにため込む、回収・貯留(CCS)が有効な地球温暖化対策であることを確認した。地中貯留の場合は、CO2を地中深くの不透水層(キャップロック)の下にある帯水層に圧力をかけて注入して貯留する方法が有力視されている。ほかにも、回収したCO2を地中の炭層に注入してメタンを回収しつつ吸着貯留する方法などがある。一方、海洋隔離の場合は、CO2をパイプラインや船を使って直接海洋に注入して急速に海水に溶解させるか、深海底に貯留するかして隔離する。

CCSは、2005年に公表されたIPCCの特別報告書でも、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるための主要な対策として位置づけられた。また、気候変動枠組条約締約国会議(COP)やG8、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)などの国際的な話し合いの場をはじめ、各国政府、研究機関などでも導入に向けた議論や研究が行われている。こうした流れを受けて、2006年にロンドン条約の一部が改正され、投棄の例外としてCO2を海底下の地層に貯留する場合は、海洋投棄とみなさないことになった。CCSについては、ノルウェーやカナダ、英国などの欧米諸国や産油国などで具体的なプロジェクトが進められている。

わが国では、CCSは低炭素、脱炭素社会の実現に向けた中長期的な対策として位置づけられており、いわば「つなぎ」の技術として期待されている。排出量の約3割を占める火力発電や、約1割を占める製鉄業などから発生するCO2を大幅に削減することができるためだ。研究開発の分野では、(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)が、新潟県長岡市で1万tものCO2を炭層へ圧入する試験を実施し、一定の成果を得ている。

一方、政府は2008年7月に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」に、CCSの開発推進を盛り込んだ。具体的には、2020年代にCCS技術の要の一つであるCO2の分離・回収コストを1000円程度に下げることを目指して技術開発を進め、2020年までの実用化を目指すとしている。その実用化にあたっては、1) 環境影響評価とモニタリングの高度化、2) 法令の整備、3) 社会で受け入れられるようにしていくこと、などが課題であるとしている。また、ロンドン条約改正を受けて海洋汚染等防止法が同年に改正され、CO2の海底下廃棄に関する許可制度が創設された。

また、経済産業省は2006年に二酸化炭素回収・貯留(CCS)研究会」を設置。温暖化対策の選択肢の一つとして推進していくための課題を整理し、2009年8月にとりまとめを行った。その中で、CCSの大規模実証事業を実施する際に安全面・環境面から遵守すべき基準として、次の9項目を示している。1) 水理地質や地質構造など地質面からの検討、2) CO2の輸送にあたっての安全の確保、3) CCS関連施設設置に関する安全の確保、4) 周辺環境への影響評価、5) CO2を地中に貯留するための坑井の掘削と閉鎖にあたっての安全の確保、6) CO2の圧入と運用時における安全の確保、7) 圧入するCO2の濃度基準の検討、8) モニタリングの実施、9) 異常発生時の対応。

一方で、CCSの導入を急ぐよりも、新エネルギーの導入や省エネルギーの推進などに力を入れるべきとする意見もある。

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