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当時の男子はみんな「スーパーカー自転車」に憧れて…。“昭和の子どもあるある”を描くノスタルジック漫画

  • 2024年3月7日
  • Walkerplus

漫画家・仲曽良ハミさんが描くノスタルジック漫画「しなのんちのいくる」。その単行本の1巻が2022年6月に、続く2巻が2023年6月に発売。さらに12月26日には3巻が発売し、話題を呼んでいる。

物語の時代設定としては昭和後期から平成初期あたり。おバカだけど憎めないヤンチャ少年「いくる」と、その姉で怒ると怖いけど実は弟思いな「しなの」。この姉弟を中心に、「あの頃」の笑いにあふれる日々を描いた漫画だ。

※発売中の書籍の中から一部を抜粋・編集し、仲曽良さんのインタビューとともにお届けする。


■最速スーパーカー自転車
現在では耳なじみのない「スーパーカー自転車」は、当時の子どもたちにとっては憧れの自転車だったという。車のシフトをイメージしており、スピードメーターが付いていたりギアチェンジャーがあったりと、少年心をくすぐる自転車だったのだとか。もちろんいくるも、その自転車を見て目を輝かせるが…。

「この作品に登場するジュン君の元ネタとなった人物に許可を取って漫画化した、100%実話なんです。公園の蛇口で体を洗ったところも事実で(笑)。彼とは今でも連絡を取り合っていて、会うとこの話を絶対にしちゃいます!」

「この話をいつか絶対に漫画にしよう」と考えていた仲曽良さん。SNSでは、この作品の読者から「田んぼに落ちた」など“自転車でいろんなところに落ちた話”がたくさん届いたのも印象的だったそうだ。

■しなのラジカセで録音する
当時は中学生くらいになると音楽に興味を持ち始め、「ラジカセ」を欲しがる人が増えたという。いくるの姉・しなのも、茶の間にしかないテレビで歌番組を録音しようとするが…。昭和世代の人にとってはあるあるのエピソードで、仲曽良さんのもとにも「経験がある」という声が多く寄せられた作品。

「読者さんからいただいたコメントのなかに、『当時は母親の声が入ってしまって嫌な思いをしたけど、大人になり母親が亡くなってからは宝物になりました』というものがありました。歳をとってから聴くのも、いいものなんだなと思いましたね。僕は、映画を録音して音だけで楽しむなんてこともしていました(笑)」

■得意なことはみんな違うんだ
「なんでも言い合えるいくるとシュウの仲の良さを描きたかった」と、仲曽良さんが振り返るこのお話。「今度のテスト、みんなで100点とろうぜ!」というクラスメイトの変な“アツさ”にたじたじになる2人は…?妙に口が達者なのに、肝心なところで詰めが甘いのが憎めない。そんないくるやシュウのクラス内での立ち位置を描きたかったのだそう。

「いくるは勉強ができるタイプでも協調性があるタイプでもないんですが、それなりに筋の通ったことを言うんです。でも、学級委員長タイプの男の子の意見も正しいんですよね。読者の方からのコメントも分かれた印象がありました」

■サイン帳を書きたいんだよ
女子を中心にブームとなっていた「サイン帳」。友達に血液型や趣味や特技などを書いてもらう、いわゆる「プロフィール帳」のようなものだ。クラスで流行っている様子を見て、いくるも「女子から頼まれるのでは」と期待するが…。

「いくるのカードには、世代の人には刺さるものを書いてみました。“好きなコーデ”に『ゴールドクロス』とか、漫画とかアニメのものを当たり前に書いちゃうっていうのは当時の男子のリアルだと思っています。ただ、ちょっと攻めすぎましたかね?(笑)」

この作品について、「マッキーが『余り』だと言って渡したサイン帳が実は余りじゃないのでは」というコメントが多く寄せられたという。「読者さんたちがキャラクターの発言を深読みして、2人の関係性を予想するのも楽しんでくれているんだなと思います」と仲曽良さん。

■恐怖の持ち物検査
先生たちの目線から子どもたちを描くことに挑戦したという作品。シールやフィギュア型の消しゴム、遊べる缶ペンといったものを“文房具”と言い張って学校に持ち寄るのが流行していたときのエピソードだ。

「今考えると、『交換』って子どもにとっては大切な感覚だったなと思うんです。シールのレートが自然と決まっていって、シール同士ならレアなものには2枚で交換とか。そういう商売っ気が出てくるというか、ちょっとしたビジネス感覚が出てくるんだな、と。家でやればいいんですけど、学校でやることに意味があって、『見つかったらヤバイ』っていうスリルも楽しさのひとつでしたね」

■父さんの紙飛行機
自分ではうまく作れない紙飛行機も、なぜか父の手にかかればよく飛ぶ紙飛行機になる…そんな経験はないだろうか。父といくるが遊ぶ様子をのびのびと描いたこの作品は、仲曽良さんのお気に入りでもあるという。また、初めてコマ割りを取っ払い、一枚絵で描くという攻めたカットに挑戦。家や町を細かく描き、いくるたちの生活感を感じられるようこだわりを詰め込んでいる。

「『遊びの先輩である父から紙飛行機の作り方を教えてもらう』というお話なんですけど、子どもが遊んでもらってるだけではなくて、父さんも子どもに遊んでもらってるんだと思います」

「あるある!」と笑えて、素直な子どもたちの言葉や行動に時折ハッとさせられることもある「しなのんちのいくる」。次回もお楽しみに!


取材・文=織田繭(にげば企画)

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