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ビーチコーミングを楽しもう!(後編)

  • 2019年9月6日
  • NACS-J

この夏、皆さんは海に遊びに行きましたか?
海水浴シーズンは終わりましたが、これからの季節、楽しいのが貝殻拾い=ビーチコーミングです。日本には9000種もの貝がいると言われています。
ビーチコーミングで何種類の貝を見つけられるかチャレンジしてみてください。

打ち上げ貝から分かること

 打ち上げ貝からはいろんなことが読み取れます。同じ種類の貝をたくさん集めれば、成長段階の殻の変化や年齢構成などが調べられます。二枚貝では、殻に丸い小さな穴が開いたものがよく見られますが、これはツメタガイなどのタマガイ類に食べられたものです。どの程度の割合で捕食されているか、殻のどこに穴が開いているかも調べてみましょう。

 貝がらには新鮮なものと古いものがあります。例えば、バイやハマグリなどは、日本の多くの海岸で消滅しており、今では古い殻しか拾えない場所も多くなりました。東京湾のふなばし三番瀬海浜公園では、今でもハマグリの殻が拾えますが、それらは30年以上前に生息していたものです。古い貝がらも集めてみると、昔の海の環境を知ることができます。2000年以上昔の貝の化石が、古い地層から洗い出されて見つかることもあります。


地元産以外の貝も落ちている

 海岸では、食べかすなどでほかの場所の貝がらが捨てられていることがあるので注意が必要です。日本には生息していないシナハマグリの殻もよく捨てられています。また、人工海浜では、海底から浚渫した砂に貝がたくさん混じっています。浚渫砂の貝は、殻が劣化していたり、その海域にいないものであったりして、専門家には区別ができますが、一般の人には難しいかもしれません。

 地域の貝類相を調べるときには、こうしたよそから持ち込まれた貝類を区別せねばなりません。浚渫砂による人工海浜の造成は、環境破壊の問題がいろいろと指摘されていますが、ある地域の自然を調べる上でも、生物地理学的な混乱をもたらしています。そのほか、海外との船の往来によって持ち込まれたシマメノウフネガイ、ムラサキイガイなど、日本に定着して広がっている外来種もあります。



増えてきた外国産の貝


貝を愛でる日本文化

 日本人は、古くから渚に寄せる貝を愛でてきました。平安時代には「貝合わせ」という貝を見せ合って歌を詠むという遊戯が成立しています。
「しほそむる ますをのこ貝ひろふとて 色の浜とはいふにやあるらむ」という歌は、平安時代末期~鎌倉時代初期の僧・西行が現在の福井県敦賀市色ヶ浜で「ますほの小貝」を拾う情景を詠んだものです(山家集)。江戸時代の歌人・松尾芭蕉はこの歌に憧れて「十六日、空晴たれば、ますほの小貝拾はんと、種の浜に舟を走す」と色ヶ浜(種の浜)を訪れ、「波の間や 小貝にまじる 萩の塵」(波の間には、ますほの小貝に混じって、萩の花びらも舞っている)の歌を残しています(奥の細道)。

 この「ますほの小貝」は7㎜ほどの二枚貝・チドリマスオガイ(*)のことであろうと考えられています。いかに日本人が自然の小さく繊細な美を愛してきたかを物語る素晴らしいエピソードだと言えるでしょう。私たちが浜辺で貝がらを拾った時に感じる自然の造詣への感動は、西行法師や芭蕉が生きていた時代と変わらぬものであるように思います。

山下博由(貝類多様性研究所)


出典:日本自然保護協会会報『自然保護』No.528(2012年7・8月号)

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