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「性」についてとことん考え、未来に絶対必要な心を養える一冊『ジェンダー&セクシュアリティ論入門』

  • 2024年1月21日
  • GetNavi web

2023年の漢字は「税」でしたが、個人的には濁点をとった「性」でしょ! と思った1年でした。6月に可決された『“LGBT理解増進法』に、歌舞伎町のトイレ問題、世界中を巻き込んだ性加害問題など思い返せば「性」について考えなかった日はなかったのでは? と思うのですが、みなさんはいかがでしたでしょうか。

 

日本でも少しずつではありますが、性についての理解を深めようとする人が増えてきたと思います。しかし、正しく理解できている人はまだまだ少ないのが現状。今回ご紹介する『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』(三橋順子・著/辰巳出版・刊)は、10年以上明治大学文学部で講義されてきた『ジェンダー論』の議事録をもとに執筆された一冊です。

 

Trans-womanである三橋さんの経験談や研究されてきたことが綴られており、「そうだったの!?」「マジか……」「知るって大事」とめちゃくちゃ独り言が出てしまう一冊でした。ジェンダーって難しそう、セクシュアリティなんて考えずに生きたい、そう思っているそこのあなたっ! ぜひ手に取ってみてください。たくさんの人に届け〜! と願いを込めながらご紹介させていただきます。

 

そもそも「ジェンダー」ってなんだ?

この『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』は、全7講で章立てされています。個人的にいちばん唸った章が、「第2講 ジェンダーを考える」でした。この中で三橋さんは、ジェンダーについて次のように解説しています。

 

まず、ジェンダーとは何か? の定義から入りましょう。私は人文・社会科学系の学問の定義は、自然科学系と違って、複数あっていい、多義的でいいと考えていますので、3つの定義をお話しします。

まず、ひとつ目。いちばん簡単に言えば、ジェンダーとは「社会的、文化的性」となります。それではなんのことかわからない、もう少し説明をしてほしいということでしたら、ジェンダーとは「人間が生まれたあと後天的に身につけていく性の有り様」と言い換えることができます。

(『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』より引用)

 

残り2つの定義についてもじっくり紹介したいのですが、まずはここまでを引用しました。大切なのは、「性の有り様」という部分ではないかな? と思うんです。ジェンダーについて考える時、男か女かの二極で考えてしまいがちですが、社会の中で生きていくためにはその2つだけでは語れない部分も多分にあるよね、と感じます。私自身は、生まれてから今まで女子トイレに入り、女湯を選び、性別欄でも女に丸をつけていますが、社会の中には男か女かだけでは表現できない「性の有り様」がいくつもあるんですよね。

 

『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』の中では、①生物学的性(身体的性)、②性同一性(性自認)、③社会的性(性役割/性表現)、④性的指向(性愛対象)の4つの要素があると書かれてありました。男だから、女だから、それだけじゃない「性」の理解について考えさせられました。

 

L/G/B/Tはいつから使われるようになったの?

みなさんの周りにはL/G/B/Tの知人・友人はいらっしゃいますか? 私自身、学生時代や社会人になってからもL/G/B/Tの方と仲良くなったりお仕事をしたりしていたので、違和感を感じることはなかったのですが、LGBTという用語が「急に出てきた!」と感じる方も多いかもしれませんよね。実は、日本でさかんに「LGBT」と言われるようになったのは2012〜2013年ごろ。この経緯についてはめちゃくちゃ面白いことが書かれてあるので、ぜひ『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』を読んでいただきたい! 私は「うわ〜〜日本っぽいよぉ」と胸が苦しくなりました(笑)。

 

ちなみに『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』では、各講義の最後に、学生さんからの質問に答える部分もしっかり掲載されています。その中で、これはたくさんの人に読んでもらいたい! と思う三橋先生の言葉があったので紹介します。

 

質問:LGBT当事者にはどう接すればいいのでしょう?

答え:普通に接してください。「性」の問題は、その人の数多い属性のうちのひとつに過ぎません。そのうちひとつが自分と異なっているからといって、普通に接することができないことはないと思うんです。ただ、その違う部分にあまり突っ込まない程度のマナーは必要でしょう。肌の色が違う人に「なんで肌の色が違うの?」と言わないのと同じです。なかなか難しいことですが、要はあまり過剰に意識しないことです。

(『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』より引用)

 

心から共感しましたし、自分が普通だと思い込んでいるような人たちに言って聞かせてやりたい! とすら感じさせてくれる回答ですよね。属性のうちのひとつが異なっているだけ。それなのになぜここまで「みんなと同じ社会」じゃないといけなかったのか? 少しずつでも意識が変わっていければいいな〜と感じました。

 

若い人はもちろん、正しい性教育を受けてこなかった大人にも知ってほしい

日本では「性教育」と聞くとなぜか恥ずかしいことと思われがちです。私も中学生のころ、保健体育のテストでほぼ満点をとっただけなのに「お前、エロいなぁ〜」と言われたことがあります。当時の同級生に言いたい! 「性について詳しくてなにが悪い!!」と。

 

どうしても学生時代の「性教育」では生殖に関わる部分がフォーカスされがちですが、『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』で書かれてある「性」は本当に多様で、一言で言い表せるようなことだけではないと感じられました。性について知ることは、社会を知ること、さらには未来を作ることにもつながるのではないでしょうか。

 

決して恥ずかしいことではない、むしろ知らない方が恥ずかしい。そんな世の中になってほしいと思います。若い世代の方はもちろん、正しい性教育を受けてこなかった大人のみなさんにもぜひ読んで理解を深めちゃいましょう!

 

【書籍紹介】

これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門

著者:三橋順子
発行:辰巳出版

本書は、2012年の開始以来、毎年300人以上の学生が受講する明治大学文学部の『ジェンダー論』の講義録を基に執筆されたジェンダー&セクシュアリティ論の入門書です。自らの「性」と社会的な「性」のしくみについて真剣に考え、多様な「性の有り様」を知ることは、もはや、すべての人々にとって避けて通ることのできない今日的な課題と思われます。LGBTQ+、同性婚、トランスジェンダー、ジェンダー・アイデンティティ…といった最近よく耳にする言葉についても分かりやすく解説していき、さらに性的マイノリティとして社会を生き抜いてきた著者が、実際に体験してきたこと、考えてきたことも多く反映された一冊となっています。

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