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1000本以上の「竹」を使う⁉ 里山の生態系保存にもつながる「米づくり」

  • 2023年10月10日
  • コロカル

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

6月に植えた田んぼの稲が育ち、だんだんと実が熟してきました。今、糸島の棚田は真っ赤な彼岸花と緑の稲のコントラストが美しい季節です。

集落のなかでも9月末には稲刈りをしている田んぼを見かけるようになりました。私たちも10月に入れば稲刈りの準備です。

棚田に咲くヒガンバナの写真

週末にはカメラを片手に散歩している人たちもちらほら。空は高く風は気持ちよく、棚田の風景を楽しむにはもってこいです。

竹を組んだ「はざ」でお米を干す

我が家のお米は「天日干し米」。機械乾燥ではなく、太陽の光でじっくりお米を乾燥させる、昔ながらの方法です。急速に加熱しないため、お米の食味が低下せず、干している間に茎の栄養がお米に移っておいしくなるともいわれています。

収穫したお米を乾燥させるには、稲を束にして縛ってから、竹で組んだ「はざ」に引っ掛けていきます。

その「はざ」の材料となる竹を用意するために、毎年山に入って竹刈りをしています。

竹をのこぎりで切る少年の写真

子どもたちと一緒に竹の準備。

昔はあちこちの田んぼで天日干しが行われていたため、竹刈りも毎年行われていたのですが、今では機械で収穫→乾燥→藁(わら)の粉砕までやってしまうので、竹をとる人はずいぶんと少なくなりました。

また、竹は日本各地で“カゴ”や“ザル”などの日用品や建築資材、楽器の素材など暮らしのさまざまな場面で活用されてきましたが、プラスチックなどの代替製品ができたことや、安価な竹細工の輸入品が増加したことなどから一気に需要が減り、竹林は放置されるようになってしまいました。

竹林での竹間伐の風景

竹が伸び放題になっている竹やぶを切り開いて、光を入れます。

そのため、多くの里山の竹林で荒廃化が進んでいます。竹は成長が早く、繁殖力が強いため、管理しないとすぐに密度が高まって太陽光が届かず、ほかの植物が育ちにくい環境となってしまいます。また、増えすぎた竹は山の保水力を低下させ、土砂崩れなどのリスクも高まります。

昔は生活に欠かせない素材だった竹ですが、今や里山の生態系をおびやかす「竹害」を引き起こす植物となってしまいました。

一方で、昔ながらのお米づくりは、定期的な伐採によって竹林の荒廃を防ぎ、里山の生態系保存にもつながっていくのです。そして、人が山に入ることで動物と人との境界線をつくり、動物が里に降りて来づらい環境をつくる役割も果たしています。

稲刈り前の大仕事! 10メートルを超す竹を伐採する

はざかけにした稲穂の写真

収穫したお米を「はざ」にかけて天日干し。

お米を干す「はざ」は、3本の竹を縛って支えにして、そこに太くて大きな竹を乗せていきます。1本の太い竹を支えるには、6〜9本ほどの細い竹が必要です。

現在、私たちの育てているお米を干すのに、太い竹は約133本、その竹を支える細い竹は約1000本、合計1133本の竹が必要です。あらためて計算したら、なんだか気が遠くなってきました……(笑)。

はざにぶら下がる大勢の子ども

「はざ」の組み立て。しっかり組めば、子どもがぶら下がっても大丈夫。

この途方もない数の竹を、棚田オーナー制度のオーナーさんや、学生棚田プロジェクトの学生さんたちと協力して、数年かけて切り出してきました。

竹は使っていくうちに劣化するため、全体量の3分の1程度を毎年入れ替えていきます。メンテナンスも骨の折れる作業です。

はざを組み立てる外国人たち

留学生たちと一緒に「はざ」の組み立て。細い竹はハンマーで叩いて、地面に差し込みます。

大変なことの多い竹刈りではありますが、同じくらい楽しさもあります。

10メートル以上に育った竹を切り落とす瞬間は迫力満点で、ちょっとしたアトラクションのようなドキドキ感が味わえます。ノコギリで根本を切るとメキメキッと竹が割れ、大きな音を立てて倒れていきます。

すると、薄暗かった竹林に光が差し込み、空が広くなって、スカッとした気持ちになるんです。その達成感、その気持ちよさといったら! この体験にハマってしまい、夢中で竹を切っていく人もいます。

切り出した竹を引っ張る男性たち

切り倒した竹を引っ張る学生さん。この日だけで200本以上の竹を切り出しました。

トラックに乗せられた竹

軽トラに積んで運びます。

切り倒した竹をカットし、先端の細い部分は支えの竹に、根元の太い部分は稲を干す竹に、それぞれ用途別に仕分けしていきます。

雨に濡れて腐らないように、防水シートをかけたら準備完了です。

竹でつくったコップを片手に乾杯をする人々

竹刈りのあとはバーベキュー! 余った竹でコップをつくったり、お米を炊いてみたり。

約1000本の竹でお米を干そう! 稲刈り体験の参加者を募集中

これで稲刈りの準備は万全!(田んぼを荒らすイノシシさえ来なければ……!!)10月からは、いよいよ稲刈りが始まります。

秋の2か月は、我が家の1年分のお米を自給するのにとても大切な期間です。10月は稲を刈って「はざ」にかけ、2〜3週間かけてお米を乾燥させます。11月になったら、お米を稲わらと籾(もみ)に分ける脱穀の作業が待っています。

刈り取った稲穂を抱える女性

「ついに収穫できました!」と笑顔の参加者さん。

〈いとしまシェアハウス〉では毎年、棚田のオーナーだけでなくさまざまな方が稲刈りを体験できるイベントを企画しています。

今年は「お米づくり体験をしてみたい」という方がより参加しやすいよう、滞在費が安くなる企画をいくつか用意してみました。気になるプログラムがあったら、お気軽に参加してみてください。

(1)【10・11月限定!】家賃が最大100%OFFになる稲刈り・イン・レジデンス募集稲刈りをすればするほど家賃が安くなる、稲刈り・イン・レジデンス・プロジェクト。収穫したお米のプレゼントもあります。詳細はこちら

(2)家賃・食費・光熱費が無料! 棚田のインターン生募集お米づくりを本格的に学んでみたい方向けに、一緒に棚田を管理する「棚田のインターン」を募集します。田んぼ作業期間中は家賃・食費・光熱費無料! 暮らしの心配をせずにお米づくりに集中できます。詳細はこちら

(3)2泊3日の家賃・体験費が無料! 「福岡くらしごと体験」福岡県からの補助を利用して移住を検討している方向けに、無料で我が家の暮らし体験ができるプログラムが始まりました。「気になっていたけれど機会がなかった」という方、必見です。詳細はこちら

そして、毎年恒例の稲刈りイベントも企画しています! 

稲刈りイベント@いとしまシェアハウス詳細はこちら

今年は水不足もなく、稲の実もしっかりついていて豊作の予感がしています。稲刈りは収穫するまで最終的な量がわからないのですが、どうか無事にお米が収穫できますように。

美しい糸島で、お待ちしています! 

稲刈り中の風景

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CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森

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