山岳とチョウの写真家として著名な田淵行男さんの写真集「高山蝶」をSSPの会長の竹村嘉夫さんから頂いた。
「高山蝶」は1959年の発行。ぼくが中一の時の出版だ。ライフワークともいえる高山蝶の生態を細かく記録した労作である。
中学3年の時に歯科医の宮川さんのところで、この写真集を見せていただいた。定価3800円と当時としては大変高価な写真集である。田淵さんの本は後世に出版されたものは何冊か持っているが、高山蝶は入手が難しい本で手元にもない。一度読んでみたいと思っていた本なので大変嬉しかった。
生態撮影覚え書きという項目もあって、田村栄さんの「昆虫の生態」の同様の項目と比較してみると興味深い。
当時盛んになりつつあるカラーと、従来のモノクロについて書かれている項も面白い。田淵は
「正直に言って、カラーを使うとき、残念ながら、そのものの色調を正確に表現したいという念願よりも、どのような色合いにできてくるかという期待の方により大きな興味と関心が持たれるのである。そしてその結果が、そのものの本質に背馳しない範囲の色調に再現され、いわばそのものなりの雰囲気が感じられれば成功と考え満足している。つまり科学的に許容される領域内で美的であればよいと思う。本当はこれでは学問的に関する限り困るし、まことに頼りない話でもある。」
田淵行男は主にモノクロでの撮影をその後も好んだ作家である。今のデジタル時代に生きたら、どんなふうに感じるのだろうか。
海野和男写真事務所へのご連絡、小諸日記へのご意見
プロフィールページのアドレスへ
掲載情報の著作権は海野和男写真事務所に帰属します。
Copyright(C) 2025 UNNO PHOTO OFFICE All Rights Reserved.