マレーシアから東京に戻ったら、新しく出た「ぼく バナナムシ」という絵本の見本が事務所に届いていた。創作絵本で、文は飯田育浩さん。ぼくは写真の担当だ。
何年か前に幼稚園で虫の話をしたときに、園児たちから「バナナムシの写真見せて」とせがまれた。バナナムシとはツマグロオオヨコバイのことで、都会の公園などにも多いので、園児たちにもっとも身近な昆虫の一つになっているのだ。
バナナムシはいろいろな植物の葉の裏にとまっていることが多い。例えば、ヤツデやアジサイなど、都会のどこにでもある植物にいる。大人は上から見るから見つけにくいが、小さな子供は低い視点から見るから、見つけやすいのだ。
さて、バナナムシの一生を撮影しようと思ったら、結構難しかった。まずいつ頃卵を産んでいつ頃親になるかも余りよく知らなかったのだ。
冬の成虫での越冬や、春に交尾や産卵を撮影したことはあった。バナナムシの成虫はほぼ一年中見られるから、きっと、年に2回は発生しているのではと思いこんでいた。
まず成虫をつれてきて飼育しようとしたけれど、これも意外に難しかった。バナナムシはセミに近い仲間だ。植物に針のような口を刺して、汁を吸う。汁を吸うときに植物が水を吸い上げる力を利用しているようで、水差しにした植物ではなかなか長期間の飼育は難しい。
越冬したバナナムシは5月頃に卵を産むことが多い、幼虫の成長もゆっくりで、親になるのは8月末頃からだ。昨年から取りかかっていて、秋に出版が決まっていたのに、羽化の場面が撮れたのは8月も末になってからだった。
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