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海野和男のデジタル昆虫記

「デジカメ自然観察14」接写での被写界深度

「デジカメ自然観察14」接写での被写界深度
2005年10月29日



現在ニューギニア取材旅行中です。小諸日記は前もって作っておいた「デジカメ自然観察」を連載で掲載しています。現地からの日記も状況の許す限り更新したいと思っています。

 接写では被写界深度は極端に浅くなるという性質がある。例えばぼくの持っているあるメーカーの35mmカメラ用の90mmマクロレンズの場合、シジミチョウをかなりの大きさに画面に入れるには、フイルム上で、だいたい1/2倍ぐらいの倍率で撮影しなければならない。このレンズをF16に絞った場合、レンズについていた被写界深度表で見てみると、ピントの合う範囲は0.34m~0.36mとなっています。シジミチョウは2cmぐらいの大きさですから、F16に絞ればだいたいピントが合うことがわかる.
 同じ被写体をコンパクトデジカメで撮った場合、1/2CCDデジカメで約5絞りでだいたい同じ被写界深度が得られるから。絞りはF2.8で同じ仕上がりの写真が撮れることになる。だいたいデジカメのレンズというのは明るさがF2.8からF4ぐらいのものが多いので、絞りを絞らなくてもピントがしっかりとチョウにあった写真が撮れるというわけだ。
 ちなみにさきほどの90mmマクロレンズの場合、F2.8では被写界深度はほとんどなく、表では0.35m〜0.35mとなっている。つまりほんのピンポイントにしかピントが合わない。もっとも遠景の場合には被写界深度はずっと深く、さきほどの90mmマクロで無限にピントを合わせた場合、F16でだいたい17mから無限までピントが合う。F2.8でも110mから無限までピントが合う。
 絞りをあけて撮影するメリットは速いシャッターが切れることだ。絞りとシャッター速度というのは両方とも光がCCDやフイルムにどれくらい届くかを制御する装置だ。シャッター速度が速くなっても、絞りを絞っても、届く光は少なくなる。シャッターを切った瞬間の被写体の明るさというのは一定なわけだから、絞りを絞ればシャッター速度は遅くなり、絞りをあければシャッター速度は速くなる。
 フイルムやCCDの感度によって違うが、フイルムは標準的なISO100を使った場合、晴天の屋外でシジミチョウぐらいのものを拡大して撮影するとだいたいF4で1/500秒のシャッターが切れる。F5.6なら1/250、F8なら1/125、F11なら1/60、F16なら1/30が適正露出になります。デジカメの感度もISO100ぐらいのものが多いので、だいたいフイルムと同じと考えて良い。
 ということは、35mmカメラでシジミチョウを隅々までピントが来るようにF16に絞ると1/30のシャッタースピードで撮影することになるから、まず100%手ぶれしてしまう。これがコンパクトデジカメならF2.8で1/1000のシャッターが切れるから手ぶれの心配はまずない。ということでCCDの小さなデジカが、被写界深度がとくに問題となる接写に適しているかわかると思う。
 接写のために被写界深度を優先させすなら、迷わずに小さなCCDのカメラを選ぶのがよいのだが、画質となるとどうなるだろうか。
 CCDは一般に正方形の小さなセルが並んでいる。同じ画素数でもCCDが大きければ一つ一つのセルが大きくなる。セルが大きいと言うことは一つ一つのセルにはいる光が多くなると言うことも意味している。光が多ければ感度が高くなる。普通のデジカメはCCDや画素数の大きさに関わらず、だいたい感度がフイルムのISO100ぐらいに設定されている。同じ画素数なら大きなCCDを使ったカメラの方が、無理をせずに感度を得ていることになるのだ。それがいわゆる画質に影響してくる。小さいCCDだとどうしても無理があり、ざらざらした感じのノイズがでたり、階調が損なわれたりすることがある。標準で明るいところで使ったときには差はほとんどないが、暗いところで感度を上げたりするとその差が出てくる。
 ぼくの使った経験では、そのかねあいから500万画素クラスでは1/2から2/3のCCDが被写界深度の深さ、画質の良さなどからバランスが良く、昆虫や植物の写真を簡単に撮影するのに適しているかなと思う。ただデジカメはどんどん画質も使い勝手も良くなっているから、数年後には1/2CCDで2000万画素とか、極小の1/6CCDで500万画素とかで、十分な画質の機種がでてくるかもしれない。(「デジカメ自然観察のすすめ」(岩波ジュニア新書)からの抜粋を書き直したものです。本をお買い求め頂ければ幸いです。)
 写真はリコーCaplioGX8の広角側マクロで撮影(1/1.8CCD)


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