Vol.1 ジュートバッグに賭ける夢
社会貢献と環境への取り組みをワンセットに
Mother House 代表 山口絵理子
嬉し涙は生産が始まった次の日から再び絶望と悔し涙に変わった。
バングラデシュから日本で通用する商品を作るのは想像以上に至難の業だった。工場のみんなからしてみたら作ったことがないデザイン、到達したことがない品質。「かわいそうだから買ってもらうんじゃなくて、日本のお客さんが本当に欲しいと思うモノを作ろうよ。」みんなの意識を変えるところからのスタートだった。
「マダム、マダムー」と笑顔で駆け寄ってくる工場のみんなが一生懸命作ったバッグを何度も「ごめん。やり直して。」と言わなければならないことが本当に辛かった。
工場の人たち。最初は緊張していたが、ベンガル語で「みんな笑って笑って〜」といったらこの表情。中央の女の子たちはとってもかわいくて、人懐っこい。
毎日5つも6つも起こるトラブル、眠れない日々を乗り越えて、やっとの思いで160個のバッグが完成した。
出来上がったバッグをダンボールに詰め、最後に工場長が私に言った。
「僕達のベストは尽くしたと思う。」
たった一言だけど、その言葉にこめられた沢山の想いと沢山の希望を胸いっぱいに感じて、涙が止まらなかった。
日本へ帰る飛行機の窓から見た喧騒の国、バングラデシュ。 この国で作られたジュートバッグの重さを一人でも多くの人に感じてもらえるように、そして良い知らせを持ってまた工場のみんなと会える日を夢見て、2006年1月160個のバッグと共に日本へ帰国。2006年2月インターネットで販売を開始。
私にできることは大海に一滴の滴を落とすほどのことかもしれません。けれど、何の為にこの世に生まれてきたのか、何の為に生きていくのか、それを考えた時、“かわいい”“かっこいい”と社会への貢献、環境への取り組みをワンセットにするマザーハウスの活動を通じて、先進国も途上国も関係なく、みんなと地球が笑顔で希望を持てる未来に、少しでも貢献できたらと思っています。こんな私の身勝手なチャレンジに、本当に心優しい応援をして下さる方々に支えられて、マザーハウスは今、バングラデシュのみんなと共に走り出しました。最後に、何も結果を残していない24歳の試みをこのような素晴らしい形で掲載して頂き、温かいご助言ご指導を頂いた皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
株式会社マザーハウス
http://www.mother-house.jp
バングラデシュのジュートバッグ4点販売中です。
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■ 編集後記 山口弘一(NPOローハスクラブ)
開発途上国への国連や国の公的機関の援助は勿論重要な役割を担い、復興や貧困への対策として有効なのだろう。しかし本当に必要な人たちに行き渡るような仕組みになっているかというと、私としては疑問点も多く感じている。また、安い労働力を求め進出する大企業も資金や技術移転も行わず本当にその国のためになっているかどうか、本当の意味で考えなければいけないのではないか。
「フェアートレード」もファウルか、フェアーか、わかりにくいという意見もある。
山口絵理子の活動はこれらとは全く異質のものである。「本当の国際貢献とはなにか」を考えさせるし、「手を差しのべる」ことの意味を考えさせられるものである。 丁寧に作られたジュートのバッグは今、わたしの宝物に見える。