Vol.1 ジュートバッグに賭ける夢
社会貢献と環境への取り組みをワンセットに
Mother House 代表 山口絵理子
そんなある日、ダッカの街で一つのバッグを見つけた。
見てみると“ジュートバッグ”と書いてある。
「ジュート??」
調べてみると、ジュートとは麻の一種で通常の植物の5〜6倍の二酸化炭素を光合成の過程で吸収し、廃棄時には有毒なガスを一切出さず、そして何と粉砕すれば肥料としても使用できる環境にとっても優しい素材だということが分かった。そして国全体のGDPがビルゲイツの個人資産とそれほど変わらないバングラデシュが世界の輸出量の90%も占めるジュート大国であることも知った。
「これだ!バングラデシュでジュートバッグを作って日本で販売しよう!ブランド名は尊敬するマザーテレサから取ってマザーハウス!」と決めた。
善意や自己犠牲の上に成り立つ援助や寄付という形ではなく、経済の基盤をしっかりと持った持続的な協力の仕方。それは、途上国にある資源を使って、先進国でも十分通用する商品を作り、輸出を促進することだ、と私なりの答えを見つけた。
彼の縫製はナンバーワン!とても勤勉で優しい
正面にいる男性がデザイナー兼パタンナーのノヨン。絶対的に信頼できる人。「やり直してくれる?」と言ったとき彼は「恥ずかしいものを日本に送るわけにはいかない」と言って、私を嬉し泣きさせた人。
「この活動ならば、現地で働く人達の頑張りがビジネスを通じて得た正当な利益という形になって報われて、そして日本のお客さんにはかわいいバッグを届けることができる!」
その日からジュートバッグ生産者探しの旅が始まった。
素人の私がスケッチブックに描いたバッグのデザインと、アルバイトをして貯めた僅かだけど私の全財産を持ってバッグの工場を何十件も回った。
「お前みたいな素人娘に何ができるっていうんだ。俺たちは専門家だ。」
一生懸命伝えた私の夢は全く相手にされなかった。
「サンプルを作ってみるよ。」と言ってくれた工場の人たち。サンプル料金を払ったらそれっきり音信不通になってしまった。
「はぁ・・・やっぱり私なんかには無理なのかなぁ。経験もないし、お金もないし・・」
諦め半分でも可能性はゼロではないと信じて続けた生産者探し。
帰国寸前になって最高の生産者と出会えることができた。
「君の夢に賭けてみよう。」