毛利さんが提唱する「コラボレーション美学」とは、どういうものですか?
「モーリ・マスク・ダンス」で悪魔を踊る毛利臣男1988年東京、スパイラルホール Photo:藤井秀雪 1996年に空間演出をした「モードのジャポニズム」展で、京都服飾文化研究財団会長の塚本幸一さんから「スパイラルで20世紀から21世紀にかけて何か新しい風を吹かせてほしい」という提案を受けました。
それで「クリエイションの原点となるような空間展をめざし、20世紀から21世紀への新しい橋を架けよう」と、僕は「モーリの色彩空間」展を提案しました。
年齢、性別、経歴、国籍を問わず、まだ人に知られていないすばらしい感性をもつクリエイターは多い。そうした人々を世に出すというコンセプトの新しい試みとして、「モーリの色彩空間」 展 は、10年計画で97年に始まり、2006年の10回目で最終回を迎えました。
2001年ロンドンで公演の「AMATERASU」 例えば「モーリの色彩空間Part 5小夜子」では、1970年代のプレタポルテで新たな「美」を体現するファッションモデルとして世界的に活躍し、数多くのクリエイターたちに大きな影響を与えた山口小夜子をテーマにした、神戸ファッション美術館を皮切りに東京までの空間展です。
その「小夜子に今、何を着せたいか?」を世界中のクリエイターに問いかけ、送られてきた服を僕がデザインした「小夜子ボディ」に着せて彼らのメッセージを伝えました。
「モーリ・マスク・ダンス」は「能」をイメージした仮面舞踏劇で、絵画、彫刻、音楽、演劇、舞踊などあらゆる要素を含んでいます。
1988年に「モーリ・マスク・ダンスPart1去來」が金沢の石川県立能楽堂で行われ、出演者は山口小夜子、我妻マリ、田島順子、そしてヒデカ。彼女たちはパリ・コレクションのスーパーモデルでしたが、越智ブラザーズの音楽をバックにファッションショーでは見られない特別な演技や動作を表現しました。
2001年「モーリ・マスク・ダンスPart 5 AMATERASU」は、ロンドンのドルリーレーン王立劇場で公演され、キャストと共に企画段階から日英のコラボレーション体制で進められ、出演は山口小夜子、加藤雅也、我妻マリ、藤間信乃輔(日本舞踊)、池田美由紀(太鼓)、ピーター・ベイリス、マシュー・バーリー(チェロ)…音楽監督は加藤和彦が担当しました。
また、2000年京都造形芸術大学に客員教授として迎えられ《毛利ゼミ》において「モーリ・マスク・ダンス」を授業として取り上げて、発表は京都芸術劇場「春秋座」でプロフェッショナルなアーティストと学生たちとのコラボレーションで画期的な舞台空間を演出しました。
「モーリのコラボレーション美学」から生まれた部活動「モーリのクリエイションクラブ」は、2005年からスタートしました。2011年の「3.11」を機に部活の人たちと共に創る“神々のマスク”展を開催。ダンボールや牛乳パック等の再利用によるマスク創りは、少しずつ輪を拡げていき、その売上金はRHK Forever(旧:リメンバー神戸アンド東日本)を通して、東北への支援にしました。2016年5月、銀座ギャラリー“枝香庵”で開催した「モーリのクリエイションクラブ」神々のマスク展には合計239点のマスクが勢揃いしました。それは大きな話題を呼びました。