オペラ『ル・コックドール』のパリでの成功の要因の一つが衣裳デザインにあったように、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』でも衣裳デザインが大切な要因になりましたね。
スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」での三代目市川猿之助(中央)
スーパー歌舞伎『カグヤ』の衣裳パレード。中央に三代目猿之助(猿翁)さんと毛利さん 『ヤマトタケル』は1986年、原作:梅原猛…三代目市川猿之助(二代目猿翁)の演出/主演でスタートしました…“歌舞伎界の革命”…“新しい演劇”…と大きな話題を呼びました。
「歌舞伎を超えた発想で創りたい…と同時に歌舞伎以上に歌舞伎的でなければならない。衣裳だけ見ていてもファッションショーとして楽しめるものにしてください」と猿之助さんから注文を受けました。
オペラ『ル・コックドール』で、衣裳リハーサルがあることを体験された猿之助さんは、それ以来、歌舞伎においても「衣裳パレード」と称した衣裳リハーサルを行うようになったそうですが…
1986年1月に2日間かけて約300点の衣裳を各場ごとに着せて、ヘアメイクとのバランスなどをチェックしました。
『ヤマトタケル』は初演以来、その壮大なストーリーとスペクタクル満載な舞台が話題を呼び、ロングランになりました。
歌舞伎衣裳の素材は基本的に絹や綿が使われていますが、スーパー歌舞伎ではポリエステルなどの化学繊維が使用されています。それには何か意図がありますか?また、プリーツ技法は秀逸だと…
1988年『VIVRE21コマーシャルフォト204』アートディレクター:戸田正寿、写真:坂田栄一郎、衣裳デザイン:毛利臣男 絹や綿素材の衣裳は消耗が激しいので、化学繊維を使うことによって舞台衣裳の強度にも繋がりました。
プリーツについては、『ル・コックドール』でもプリーツを実験していますが、スーパー歌舞伎ではデザインの特徴となるほどプリーツ表現を多く使っています。このプリーツ表現が、後に世界中のファッションデザイナーたちに大きな影響を及ぼしたとは…!!! とても驚きであり、嬉しかったです。
山口県立大学、水谷由美子教授は、著書『毛利臣男の劇的空間』のなかで、“とくに注目したいのはアートディレクター、戸田正寿の指揮のもと、写真家の坂田栄一郎が1988年に撮影した「VIVRE21秋冬コマーシャルフォト204」のために毛利がデザインした衣裳である。…それまでの自然な扱いのプリーツとは異なり、近未来的なイメージを感じさせるものであった。…
この頃以降、新しく解釈されたプリーツ表現は世界的な流行となり、多くのデザイナーが手がけている。そのプリーツの美の源流の一つは、都市空間を飾った毛利デザインのコマーシャルフォト用衣裳にもあるのかもしれない”と記していますね。