サイト内
ウェブ

Vol.69 里山のクマ、動物行動学

  • 2014年10月9日

 野生のクマが人里に下りて、人間を襲う被害が相次いでいます。原因のひとつは、今年はブナの実が凶作で手に入りにくいこと。もうひとつは、マイマイガという蛾が大量発生していて、その幼虫、つまり毛虫がクマの好きな木の葉を食べ尽くしていることが挙げられます。

 クマは冬眠に入る前、ドングリなどの木の実をたくさん食べて皮下脂肪を蓄えます。冬眠はクマの妊娠期間でもあります。秋にブナが豊作だとたくさん子供を生み、凶作だと逆に妊娠をあえてしないクマが多くなるそうです。去年はブナが豊作だったので、今年は子グマの数が多く、子供たちに満足のいくものを食べさせようと、里に下りてくるのかもしれません。ということは、来年は少子化になるのかも。

 動物の生態や、自然界の社会の仕組みを考えるとき、動物行動学という言葉が出て来ます。分類学と言っても良く、生息する地域や食べるものの種類、狩猟の仕方からそれこそ冬の越し方まで、分ければ分けるほど彼らの生態がよく分かって来ます。実際、全く違う地域に暮らしていても、何を食べているかで顔の骨格が似てくるので、身体の仕組みは違うのに顔がそっくりな動物などがいるそうです。

 日本には非常に多くの哺乳類が生息していますが、猛獣と呼ばれるのは今はクマくらいしかいません(ライオンや象は動物園にいますが)。北海道や東北、中部地方の山に多く生息していますが、東京の奥多摩辺りの山にも潜んでいるとはよく聞きます。

 動物行動学的にいうと、日本のクマの住所(分類)は、動物界、脊椎動物門、哺乳綱、食肉目、クマ亜科、クマ属。食肉目と書いてありますが雑食で、ドングリも食べるし、北海道のクマは鮭を穫って食べたりもしますね。ちなみに人間をはじめとする霊長類の祖先は、食虫目のモグラだそうです。小さな身体で夜陰にまぎれ、昆虫を食べていました。1億年ほど前のことですが。

動物行動学入門

 基本的には地層に眠る化石をもとに、動物たちがどの時代にどのように変異していったのかを探ることで、何度もカテゴリーを組み替えながら研究を続けていく、途方もないスケールの学問。それでも、複雑で頭のいい巣の作り方や、植物とのみごとな共存関係、独特なコミュニケーションの取り方など、親しみやすくて面白い雑学がたくさん手に入るのもこの分野の特徴。入門編の本だけでもどんどん深入りしてしまいます。

 動物行動学を英語に訳すと、エソロジー。僕はこの言葉を、2004年にリリースしたミニアルバム「Ethology」として用い、現在も続けているメールマガジンのタイトルにも付けています。僕たち人間の生活も、自然の摂理に抗うことが出来ない部分が多く、つまりその日常を歌った歌ひとつひとつは、人間という動物の生態リポートの1ページと言ってもおかしくないのでは、なんてよく思うのです。




キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。