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「お願いママを見てよ…」一歳半健診の帰り道、未来への不安に思わず涙。一歳半健診で重要視されるものとは…?【作者に聞く】

  • 2024年4月26日
  • Walkerplus

知的障害+自閉スペクトラム症の長女とイヤイヤ期の次女の育児に奮闘しながら、自閉症育児の悲喜こもごもを発信しているにれ(@nire.oekaki)さん。子どもの成長への不安や悩みを赤裸々に描いていて、大きな反響を呼んでいる。
にれさんが新たに描き下ろした漫画とエッセイを加えた電子書籍「今日もまゆみは飛び跳ねる~自閉症のわが子とともに~」が発売された。

ウォーカープラスではこの電子書籍の中から特に印象的な漫画を、にれさんのエッセイと共にご紹介。日々思い悩みながらもなんとか前に進むママと、確かに成長していく娘の姿を描く、共感必至エピソードをお届けします。

■指差しとまゆみ
「一歳半健診で最も重視するのは指差しなんです」

発語がないことを何より心配していた私には衝撃の言葉でした。「言語面や社会性が急に伸びることは考えにくい」という心理士さんの言葉には当時ショックを受けましたが、奇跡の急成長を夢見てしまう母を現実に戻してくれたと今では感謝しています。

今回は指差しと発語におけるまゆみのケースのお話になりますが、まずは一歳半健診で指差しが重要視される理由について、後に私が学んだことを導入とさせてください。『9ヶ月革命』という言葉をご存じでしょうか?定型発達の子どもの場合、指差しは9~11ヶ月頃に始まります。指差しや他者の視線の追従など、注意を向ける対象を共有することを「共同注意」といい、それまで「自己-他者」か「自己-モノ」しかなかった赤ちゃんの世界に「自己-他者-モノ」という「三項関係」が成立したことを意味します。

三項関係はコミュニケーションの土台となる「他者意図の推測」の萌芽となるため、心理学者のマイケル・トマセロは赤ちゃんの脳内で起こるこの劇的な変化を『9ヶ月革命』と呼びました。これらの成立を確認するのが指差しというわけです。

さて、遅れること約33ヶ月、まゆみに『3歳半革命』が起きました。絵本を眺めていたまゆみに「イチゴはどれ?」と聞いてみたら、絵本に目を落としたままイチゴを指差してくれたのです。いつもなら無視されるので驚きつつも、「リンゴは?」「ケーキは?」と続けて聞くと、まゆみはどれも正確に指で答えることができました。

指差しにも自発・要求・共感など、いくつか種類があるので全てをクリアしたわけではないのですが、まゆみは質問に指で応える「応答の指差し」ができるようになりました。初めてやりとりできた感涙にむせぶ母を気にも留めず、まゆみはベリークールに絵本を見ています。思わず抱きしめると迷惑そうな顔をされてしまいました。

そして、一歳半健診で心理士さんが言ったことは本当でした。指差しができた後、まゆみの発語が増えてきたのです。まゆみができるのは応答の指差しだけですが、不完全な共同注意であってもコミュニケーションの兆しが確かに感じられました。

さらに嬉しい変化が、言葉が増えるにつれてまゆみの表情も明るくなったことです。普段のおすまし顔はそのままですが、よく笑うようになり、『仏頂面のまゆみ』と呼ばれることはなくなりました。もしかすると、まゆみ自身も発語できるようになって嬉しかったのかもしれません。まさに『革命』と呼ぶにふさわしい変革でした。

そうして4歳を過ぎたころ、今度は語彙が爆発的に増えました。言葉は理解していても会話はできない・自発的に話さないというアンバランスさはありましたが、言語理解が進んだためか簡単な指示を聞いてくれるようになりました。

5歳になる現在、自発的に指差しすることはまだ難しいようですが、「リンゴ!」「チーズ!」など単語で要求を伝えてくれるようになり、ゆっくりですが成長してくれているのを実感します。

ここでご紹介したのはまゆみの例に過ぎませんが、自閉症児に関する著述を読んでいると3~4歳ごろに指差しを獲得している事例をいくつか目にするので、そう珍しい経過ではないのかもしれません。

発達は人それぞれでまゆみにできないことはまだまだ多くありますが、なるべく周りとは比べず、過去のまゆみと比べてできるようになったことを認めていこうと思います。

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