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合法ヒッチハイクで、エコロジー

  • 2002年12月1日
  • 緑のgoo編集部

合法ヒッチハイクで、エコロジー

 どうせ同じ方角に行くのならば、車2台で行くよりも、同じ車に乗り合ったほうがエコノミックな上に、エコロジカル。ならば、乗りたい人と乗せたい人が出会える場所を作ったらどうだろう?
 こんな経緯で、今から40年前にフランスで生まれたのが、“アロー・ストップ”というヒッチハイク・センターだった。車を探している人と、人を載せたい運転手を登録して紹介してくれる実用的なNPOだ。このコンセプトは、あっという間にドイツ、ベルギー、イタリア、イギリスにも飛び火し、ヨーロッパでの賢い交通手段網になっている。今月は、そんなヒッチハイク・センターの元祖“アロー・ストップ”を御紹介しましょう。


ヒッチハイク・センターのシステム


「水曜日にパリからリヨンまで行きたいのですが」
「水曜日ならば、毎週トラック運転手のY氏が午後にパリ20区から出発します。2人載せることができるそうですよ」。

 アローストップでは、こんなやり取りが40 年間以上ひっきりなしに行われている。こうしていままで80万人以上(!)がこのヒッチハイク・センターを通じてで快適な旅をしてきた。
「40年間、今まで、一度も大きな事故はありませんよ」と、胸を張って言うのは、センターの代表者ランペルベルグ氏(写真)。
「保険のことを心配する人もいるかもしれませんが、心配は御無用。フランスでは、来車の中に乗り合わせた人ならば、赤の他人でも、親友でも最低限の保証をされるシステムになっています。こちらも、法的にすべてをクリアしていることを証明できる車だけを登録していますから」。
 まず、ヒッチハイカーとして登録できるのは、16歳以上。ヒッチ・ハイカーは、10キロにつき33ユーロ・セント(約4円)のガソリン代を運転手に負担するのが規則。例えば、パリからドイツのハンブルグ(約900km)に行く場合は、29.70ユーロ(約3500円程度)を運転手に払えばいい。この他に、センターにも年会費を払う必要があるが、そういったすべての費用をひっくるめても、電車や飛行機で行く場合の1/3以下になる計算だ 。
 
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カウンターの後ろの男の人がランペルベルグ氏。現在の会長さんだ。


センター誕生のきっかけ


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 この異例のアイディアは、今から40年ほど前にあるパリの学生が考え付いたという。
「その人は、ヒッチハイクで旅をするのが好きだった僕の友人Sです。Sは、あるとき、田舎で車を拾うのにまる2日以上もかかってしまったんです。車を待ちつつ、その間、『車とヒッチハイカーをつなぐセンターを作ったらどうだろう? ガソリンの省エネにもなるし、学生たちも気楽に旅ができるし、渋滞も緩和できるし、運転手だって一人よりカンパニーがいたほうが楽しいはず』と考えついたんですよ」。
 パリに戻るなり、Sさんは自分のアパルトマンの1部屋を事務所にして、電話をひいて、“アロー・ストップ”の事務所を構えた。クラスメイトたちと一緒にビラを配り、早速有志たちとNPOを作った。
「Sは、パリの自分のアパルトマンを、田舎から上京してきた学生たちに無償で貸したんですね。そのひきかえとして、週に数日、ヒッチハイクセンターで働いてもらっていた。始めはこうやって、もちつ、もたれつ、滑り出していきましたね。そのうち、反応が良く、起動にのっていきました」。
残念ながら、Sさんは数年後、病気を患ってしまい、もう携わってはいない。代りに二代目代表者になったのが、ランペルベルグ氏だ。


思わぬ出合いも


 80万人のフランスの老若男女がこのセンターを使ってヒッチハイクをしてきたとはいうものの、若い女の子が見知らぬ男と狭い空間を長時間共にするというのは、なんとなく危険な香りがしないでもないのでは、と思う人もいるだろう。
「今まで性的な事件はありませんでしたか?」と聞くと、ランペルベルグ氏はこう答えた。
「40年間に一度だけ、言葉による軽いセクハラをされた40代の女性が1人だけいます。それ以上のセクハラ、痴漢などの性的暴力については、一件もありません。その反対に、カップルは沢山誕生しましたよ。センターに届いた結婚通知状は、一体何枚になるか……」。
 こう言いながらランペルベルグ氏は、引き出しの中から封筒の束を取り出した。その中の一枚を開けて見てみると、カードには幸せそうなカップルの写真が貼られていた。「私たち結婚しました」との下に「私たちは、1984 年の6月4日に、パリからブタペストまで一緒に旅をしたものです。引き合わせていただいて感謝しています」とかかれていた。
「愛情だけではありませんよ、友情だって生まれています」とランペルベルグ氏は静かに笑った。
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人を乗せたい運転手のリストが入っている箱。年代を感じさせる。


車が増えるにつれて、社会はエゴイスティックになっていく?


 センターは、長距離だけでなく、通勤・通学のための「日常ヒッチハイク」も提案している。パリの中心地にはメトロもバスも沢山あるのだが、パリの郊外には公共交通手段が非常に少ないのだ。隣町なのに、一度パリの中心地を通過しないと辿り着けないシステムになっているのだ。こうした事情により、郊外には、嫌でも自家用車を買わねばならぬ人たちが多い。そして、パリの交通渋滞は一層ひどいものになっていく。「日常ヒッチハイク」では、通勤・通学の足を「乗り合い」にすることで、交通渋滞を緩和させようとするのが目的だ。
 「ひと昔前までは、フランスではヒッチハイクは当たりまえの交通手段だったんですけどね。でも、皆がマイカーを持つようになった今、残念ながら止まってくれる車は少なくなってしまった。この国では、市民同士の連帯感がだんだん薄れつつある」と、センターのボランティア員たちは嘆いてため息をついた。
 物質的に裕福になるにつれ、エゴイスティックになっていくのは、どの国でも同じだろう。そんな世の中の流れを食い止めようとするNPO団体は、地球の未来のために、ますます大切な存在になっていくだろう。
 
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パリのヒッチハイカー。ひと昔前と違って、車はなかなか止まってくれない。


●フランスとヨーロッパのヒッチハイクセンターのHP
 
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