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第39回エコ×エネ・カフェ「エコツアーからサステナブルツアーへ~SDGs時代の学びの旅とは~」

  • 2022年3月2日
  • 緑のgoo編集部

旅を通じて「サステナブル」な世界につながる

森:
そしてSDGs時代、「エコツアー」から「サステナブルツアー」になっていくということですが、「サステナブルツアー」という言葉に込めた思いを聞かせてください。

壹岐:
旅行をしてその時は楽しくても、帰ってきたら忘れちゃってまた新しいところを発掘して行く。過去にはそういう消費型の旅行を大量に販売してきました。
しかし、良いことは長く続けたい、良いと思った行き先には継続的に行き続けたいと思ったので自分の会社を始めたんです。SDGs時代になってサステナブルという言葉が注目されるようになりましたが、言葉が後から追いかけてきたように思っています。
旅行業というのは裾野が広くさまざまな分野にかかわれるし、行き先や内容などにはさまざまな可能性があるので、SDGs推進の可能性もたくさんあると思います。
移住と違って旅行は帰る場所がありますよね。気軽に行って、違うなと思ったら帰ってこられるので、どんどん挑戦してほしいと思います。そしてもう旅行業界自体、サステナブルでないと続かなくなってきています、新たな旅行業界のあり方が問われていると思います。

森:
コロナ禍でオンラインツアーがたくさん出てきましたが、この後スウェーデンのレーナ・リンダルさん、宮城の大沼伸治さんと中継をつないで旅気分を味わっていただくミニライブをご案内していただきたいと思います。

スウェーデンと鳴子温泉(宮城)をつなぐミニライブ

壹岐:
レーナさん(https://www.instagram.com/enjoyinguppsala/)は日本に長く住んでいたので日本語がとても堪能です。日本のスウェーデン大使館の依頼で、来日する人のコーディネートや通訳など日本とのつなぎ役の仕事をしていました。数年前に帰国して、今はストックホルムに近いウプサラという街に住んでいます。スウェーデンは環境やエネルギーを学ぶための行き先として人気ですが、今日は自宅の近くから身近なエコロジーとエネルギーの話をしてくれます。

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壹岐:
大沼伸治さんは、宮城県の鳴子温泉郷で100年以上続く旅館大沼(https://www.ohnuma.co.jp)の「湯守」です。
僕も大好きで毎年のように行っているのですが、東日本大震災の時は被災された方々を受け入れたりボランティアの方々の宿泊場所にもなっていました。また、鳴子温泉のある大崎市の「大崎耕土」の伝統的な水資源管理システムは世界農業遺産に認定されていて、温泉だけでなく発酵文化などの継承活動もされています。

人にもいきものにもやさしいエコな街・ウプサラ(スウェーデン)の暮らし

森: ではさっそく呼んでみましょう、レーナさん!

レーナ・リンダルさん(以下、レーナ):
こんにちはレーナです。私は今、ストックホルムから電車で40分ぐらいの街ウプサラの自宅マンション前の森にいます。今、日本は夜ですが、こちらはお昼の11時、気温が3℃でちょっと寒いです。
本来は日本からくるたくさんのお客さんをご案内しているのですが、今はコロナ禍なのでオンラインの仕事に集中しています。
私はマンションの運営委員ですが、屋上で太陽光発電パネルをつける計画をしたり、マンション周辺の生物多様性を維持するにはどうしたらいいかなどを話し合っています。例えばお庭にハリネズミが住んでくれればいいなと考えて、剪定した枝を捨てずに束ねて置き、巣づくりに活用できるようにしています。近くにある大きな木のどんぐりを食べに、よく鹿が来るんです。部屋の窓からも見えますよ。リスがオークの木から木へ飛びうつるのを見ることもありますし、春にはキツツキが木をつついている音も聞こえてきます。

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レーナ:
スウェーデンの自然学校に興味を持ってくださる日本の方も多いと思いますが、近くの幼稚園の子どもたちが自然の中で遊べるように遊具をいっぱい置いていますし、近くの山に登る様子もよく見かけます。
老人ホームと幼稚園が同じ敷地にあって、良い関係を築いて交流する取り組みもあります。ウプサラは自転車がとても多い街です。雪が降っても自転車移動ができるように、自転車専用道は車道より優先的に雪かきがされます。朝早くから出勤する人たちがいるので、びっくりするぐらい早い時間でもきちんと整備がされているんですよ。マンションには駐車場の他に自転車を置く建物もちゃんとあります。その他にごみ専用の建物があって、容器や包装など分別回収がきちんとされています。

参加者1:
雪は降っていますか?

レーナ:
スウェーデンの北部はいっぱい積もっていますが、ここは南部なのでそこまで積もりません。近所でスキーができる時もありますが、今年はそこまで積もってくれませんでした。

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参加者2:
野生のハリネズミはいますか?

レーナ:
ストックホルムの街中の公園で見かけたりはしましたが、ここではまだ見ていないので巣をつくってくれるといいですね。ハリネズミって近づくと丸くなって、心臓がドキドキしている鼓動が聞こえてとてもかわいいんですよ。

壹岐:
ありがとうございます。レーナさんはこの後も残っていただいて後ほどさらに質問などにお答えいただこうと思います。では続いて、大沼さんを呼んでみましょう。

自然豊かな鳴子(宮城)での「何もしない旅」

大沼伸治さん(以下、大沼):
宮城の鳴子温泉は雪がたくさん積もっています。今年の雪は重くて、屋根が潰れてしまったところもあるくらいです。壹岐さんは、東日本大震災の時にボランティアツアーをコーディネートしてくださいました。ボランティア活動の前に、まずは温泉であったまって力をつけてからというアイデアです。
震災で停電になった時、ポンプが止まったから温泉のお湯も止まっているだろうと思ったのですが、お湯が流れ続けていたんです。その時初めて、先祖が100年以上前にここを掘った時、傾斜をつくって湯船にお湯が自動的に入るようにしてくれていたことに気づきました。今もその仕組みを使っています。本当は温泉の湯気をお見せしたかったのですが電波の関係でお見せできないので…ぜひ入りにいらしていただきたいです。混浴ですが女性専用時間を設けているので安心して入れますよ。

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大沼:
鳴子温泉のある大崎市はとても広く、ラムサール条約湿地も含めて世界農業遺産に認定されている「大崎耕土」は自然豊かな場所です。鳴子ではエネルギーもつくっています、日本で4番目にできた地熱発電所があり、その下にはダムがあって水力発電所もあります。最近は風力発電がたくさんつくられる計画がありますが、これには反対派の方々もいらっしゃるようです。
鳴子は9割が森林なので林業が盛んで、木質バイオマス発電の取り組みもあります。山に降った雨は50年ぐらいして温泉として湧いてくるので、将来にわたって長く温泉を堪能するために森を守る事業も行っています。旅館大沼でもワーケーションができるように部屋をフローリングに改装しましたが、地元の山の木を切ったものを使いました。

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大沼:
旅館大沼は昔から湯治をやっています。昔の湯治というのは農作業や漁業で酷使した体を休めるという方が多かったですが、今はどちらかと言うとメンタル面のケアを必要としてる方がとても多い気がします。今は情報過多で、時代のスピードの速さはすさまじいですからね。体の疲れを癒す湯治から、精神を癒す心の湯治に移行しているというのを実感できます。メンタルの病気で休職していた方々が社会に戻るまでの間に旅館でインターンをするという復職支援プログラム事業を受け入れているのですが、温泉に入って知らない人と話したりお風呂掃除をしたりしていると、なぜかインターンのみなさんが元気になっていくような印象を受けます。人間の持続可能性の観点からも、湯治はとても大事だと思っています。

壹岐さんはいろいろな旅行プログラムをつくるのが上手ですが、私は逆に何もしない旅というのを提案しています。2泊3日何もせず、自分に余白をつくるという旅です。旅行のスタイルも変わってきています。今は、団体でいらしてどんちゃん騒ぎをするような旅行はほとんどありません。女性ひとりで湯治にいらっしゃる方も多く、温泉に入って休まないと大変だという方が駆け込むようにいらっしゃる。そういう時代だと感じています。

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壹岐:
湯治のお客さんがこけしの絵付け体験をしてとても喜んでいたこともありましたよね。旅館大沼には熱烈なファンがいてリピーターが多い印象ですが、やはりコロナ禍で大変ですか?

大沼:
畑の草むしりやこけしの絵付けなど、何かに集中することでご自分のマインドとつながることができるのだと思います。旅館大沼は私で5代目。120年ほどやっていますが、今がいちばんの受難の時だと感じています。震災もコロナ禍もあって、試練ですね。しかしおかげさまで旅館大沼を気に入って下さる方も多くて、湯治部屋に移住してきた方やボランティアがきっかけで移住した方、こっちの方と結婚した方もいらっしゃいます。

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