日本のこれから
上野: 国のエネルギーの需要と供給の目指すべき姿として、政府は、「CO2を出さない再生可能エネルギーや原子力を可能な限り多く使う。また、燃料入手の心配が少ない石炭を天然ガス火力と同程度くらいに使っていく。そして省エネを最大限実現する」としています。そうすることで、発電量の約44%が非化石の電源(再エネと原子力)となり、2030年の国全体のCO2排出量を、2013年に比べて26%削減できるとしています。
柳: 民生用といわれる家庭・業務部門など、さまざまな分野での対策が考えられています。
柳: こちらの図で示される原油換算3,050万klの省エネ、すなわち35%の効率改善は、オイルショック後並みの大幅なエネルギー効率改善のイメージです。これからは、新しい技術も入れて取り組んでいくことが検討されています。
森: 本当にできるんですか?
柳: 「できる」という前提で助成政策が準備されています。省エネを実現する上でのバリア(壁)も多々あり、相当しんどい目標です。
森: ここでJ-POWERの藤木さんにご登場いただきましょう。
藤木:これから低炭素化に向かっていくときに、経済的負担(個人、企業、国全体)はどうなるでしょうか。また、当社は石炭火力が事業の大きな柱のひとつになっていますが、CO2排出が大きいという逆風も吹いています。石炭ならではの特徴を生かして、途上国等で石炭を上手く使っていくポテンシャルもあると思いますが、この点はどう考えますか?
上野: 温室効果ガスの削減には、再エネの導入、省エネの推進、あるいは排出量取引の導入など、いろいろな方法が考えられます。しかし、大きな削減を目指す上では何らかのコストが必ずかかってきます。社会全体に影響を及ぼすものですので、いろいろなステークホルダーを交えて真剣な話し合いが必要と考えます。
柳: 私は環境から入ったので、学生時代は、世の中の電源をなぜ全部自然発電にしないのだろうと考えていました。今は仕事を通じて、日本は本当にエネルギーがない国であることを実感しています。日本の化石燃料は中東などの紛争の多い地域に依存していますが、石炭は比較的情勢が安定した国から買うことができます。今後、新たな技術を投入することで、明るい日本をどう実現していくかを、こういった場で様々な方が主体的に考え、話し合うことも大事だと思います。
森: もし、まったく手を打たなかったらどうなりますか?
上野: 何も対策しないと、3-5℃と、気温があがる可能性があるとも言われています。温度が上昇してからでは、取れる手が限られています。「削減対策」を出来る限り進めつつ、温暖化の影響への「適応対策」も同時に進めることが大事だと思っています。
柳: 何℃以内で安定とは必ずしも言い切れない。あまり感情的に訴えたくはないですが、まだわからない、人智のおよばないこともあるのではないかと、個人的には感じています。
第23回エコ×エネ・カフェの前編はゲストの上野さん、柳さんから『温暖化について、私たちが直面する現実』について触れていきました。次回後編はお二人のメッセージを受けて『参加者の地球温暖化に対する考えはどう変わったのか?』全員参加のワールドカフェの様子をレポートしていきますのでご期待ください。