現在の日本では一人が1日で12万kcalのエネルギーを消費しているとわれています。昭和43年頃はこの約半分、昭和28年頃は今のわずか十分の一でした。12万kcalのうち10万kcalが化石燃料によるもので、その約1/8が自家用車に使われているといわれています。江戸時代のエネルギー消費量はゼロに近いものでした。燃料のほとんどは山に落ちている薪で、照明にはナタネ油などを使っていました。これらは植物由来のものですのでカーボンニュートラルな燃料ですし、翌年また生えてくるので枯渇の心配もいりません。江戸時代はエネルギーを植物から手に入れていた、まさに「植物国家」といえるのです。太陽光エネルギーを浴びて育った穀物を育て、それを食し、排泄物を肥料に使う。食べる、出す、使う、作る・・・このように、生活の中に循環のしくみが当たり前にありました。
もちろん江戸時代の方がなんでもいいというわけではありません。まず、不便。衛生環境だって良くないし、大きな病気をしたらすぐに死んでしまうかもしれない。農作業にしても、汚いし苦労が多い。人はすぐに、どちらが良いか悪いかと決めたがるものですが、それは一概には言えない。車は便利だからいいかもしれないけれど、環境のことを考えたらよくない。電気や機械を使わない暮らしは環境にはいいですが不便でもあります。
最近はどうもいろいろな感覚がおかしくなっているような気がします。いかに便利さを手に入れて、いかに楽に生きるか、それを考えているうちに無駄なエネルギーを消費し、環境を破壊し、今度はそれを取り戻すためにまた多くのエネルギーを使うという不自然な循環をしている。汚さない水はきれいなんです。それが、なぜか「水が汚れたら、浄水設備を作ってきれいにしていけばいい」という発想になる。おいしいものを食べて満足して、太って、今度は慌ててダイエットのためにまたたくさんのエネルギーを使う。これが本当にエコな生活ですか。今の人たちは、いつの間にかやらなくてもいいことにばかりエネルギーを使う生活をしているように思います。
エコ×エネ・カフェ当日に77歳の誕生日を迎えた石川さん「機械の中で一番長持ちするのはSLで50年と言われているけれど、私は77歳です。人間って丈夫なんですね」
話は尽きませんが石川さんからの話は一旦ここまでとして、ここからはグループに分かれての対話の時間です。森さんが投げる三つのテーマに沿って、テーブルごとに自由に意見を交わし、またテーブルを変えて違うメンバーとの対話を繰り返す「ワールドカフェ」という方式によって学びを深めていきます。