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「分収林」 詳細解説

読み:
ぶんしゅうりん
英名:
Shared Forest

わが国にある森林の約3割を占める国有林は、山奥や河川の源流などに分布しており、林野庁が「国有林野事業」として管理経営している。民有林よりも原生環境に近い天然林が多く、日本の豊かな生態系を支えている。世界自然遺産地域のほぼ全域と、国立公園の約6割が国有林野だ。国有林においては、木を植えたり人工林をつくったりする「造林」と、森林を育てる「育林」などの事業が行われている。とくに、伐採後の収益を一定の割合で分け合うことを「分収」と呼び、林野庁が中心となって事業を進めてきた。

このうち、国有林の分収造林制度は、国以外の造林者が森林管理局長と契約を交わして国有林に植えた木を一定期間育てて、成林した時に得られる分収木を販売し、その収益を国と造林者とで一定の割合で分けあう仕組みだ。スギやヒノキなどの針葉樹やクヌギなどの広葉樹を、原則として1ヘクタール以上の面積の林で、最長80年の期間内に育てる。分収造林地では、森林の利用や管理の拠点となる施設を設置したり、森林セラピーの場として利用したりすることができる。

また、分収育林制度は、生育途上にある若い森林を国と個人などのオーナーが共有し、オーナーが樹木の持分の対価や、保育・管理にかかる費用の一部を負担する代わりに、契約期間満了時に収木の販売収益を持分に応じて分けあう仕組みだ。林野庁が1984年に開始し、「緑のオーナー」制度と呼ばれて投資案件として人気を博した。1999年に個人向けの一般公募は休止されたが、制度自体は継続している。

一方、企業と国が森林を造成、育成して伐採後の収益を分けあうのが「法人の森林」だ。こちらも、植林して新たな森林をつくる分収造林と、既存の森林を整備する分収育林に分けられる。法人の森林は全国に約500カ所あり、森林環境教育や自然とのふれ合いの場として活用されている。また、二酸化炭素(CO2)の吸収などの環境への貢献度を評価するサービスもある。

分収林は、森林所有者に森林を造成する資金や余力のない場合が多いわが国において、国民参加による森林づくりの一端を担ってきた。しかし、近年、分収林をめぐるトラブルが全国で顕在化している。契約期間満了時に想定ほどの収益が得られないことや、林業利回りの低下により森林が不良債権化してしまうことなどが原因だ。緑のオーナー制度の元本割れをめぐる損害賠償請求訴訟も起きている。

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