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「海岸侵食」 詳細解説

読み:
かいがんしんしょく
英名:
Coastal Erosion

日本列島は四方を海に囲まれた島国で、海岸線の総延長は約3万5000kmにもなる。このうち、岩礁や砂浜など自然の海岸は三分の二ほどで、残りの三分の一は人工的な海岸だ。陸と海とが交わる自然の海岸とその周辺は、豊富な栄養素や太陽光線のおかげで多くの生物が成育し、豊かな生態系に恵まれた生物多様性の宝庫だ。また、海岸では海水浴やマリンスポーツ、潮干狩り、花火大会などさまざまな催しが行われ、人間社会にとってもなくてはならない場となっている。

しかし、日本各地で砂浜などの海岸が削られる「海岸侵食」(「海岸浸食」ともいう。)が起こり、貴重な海岸が失われる被害が発生している。そもそも海岸侵食は、波や風の力で海へ運ばれていく砂の量が、河川から供給されたり海からもたらされたりする砂の量を上回ってしまうために起こる。国土交通省の試算によると、年間160haもの海岸が消失しており、この状況が続けば30年ほどで4800haもの海岸が侵食により失われるという。海岸が侵食されると、沿岸部や背後地で浸水などの被害が発生する危険性が増す。

第二次世界大戦後の高度経済成長期には、開発によりコンクリート護岸が急増して砂浜自体がなくなる事態となった。浚渫などにより海岸の土砂を掘削したことも侵食に拍車をかけた。このほかに、河川から供給される土砂の減少、防波堤などの設置による土砂の移動遮断、保安林の過剰な生育、台風・高潮・高波なども侵食の原因となる。これらに加えて、近年、地球温暖化の進行や気候変動が海岸侵食の要因としてあげられている。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2014年に公表した第5次評価報告書の第1作業部会報告書で、今世紀末に気温が最大で4.8度、海面が同じく82cm上昇する可能性があると警鐘を鳴らした。気候変動により海面水位が上昇すると、潮位が上がって海浜の汀線が後退し、高波が増えて海岸が侵食される。また、気温や海水温が上がると高潮による潮位の偏差が大きくなり、波力が増してやはり侵食につながる。

海岸侵食に歯止めをかけようと、国は海岸法に基づき海岸保全施設の整備を行うなどの対策を講じている。また、地方自治体による取り組みも盛んで、新潟県や神奈川県、三重県などが対策をとっている。主な手法として、人工的に砂を補って砂浜を造成する「養浜」、海岸から細長い堤をつくって砂をためる「突堤」、砂浜から離れた沖に堤を建設して波の侵入を防ぐ「離岸堤」などがある。

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