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「海の役割」 詳細解説

読み:
うみのやくわり
英名:
Role of Ocean

海(海洋)は、地球上の表面のうち塩水からなる海水で覆われた部分のことだ。その総面積は3億6000万平方kmもあり、地球上の表面の70.6%を占め、陸地の面積である1億5000万平方kmと比べると2.4倍にもなる。また、平均の深さは3795mで、総体積は13億7000万立法kmを超える。世界中の海には多くの「海流」が流れていて、日本の南岸沿いには流れの速い黒潮が流れているほか、近海には千島海流(親潮)や対馬海流などがある。このように海は、陸地にすむ私たちの人智や想像をはるかに超えた大きさと深さをもつ空間であり、もうひとつの宇宙と形容する人もいる。

海は地球環境の保全や、人間を含めたあらゆる生物が生きていく上で大きな役割を果たしている。海の役割の中でもっとも基本的なもののひとつが、大気との熱や水の交換だ。海には太陽の放射エネルギーが大量に注がれており、そのほぼすべてが熱エネルギーとなって、海水の温度を維持するほかは海水の蒸発に用いられる。また、太陽からの熱は海流や大気に乗って低緯度域から高緯度域へと運ばれる。このように、海は太陽から得た熱を地球全体へと送り出すとともに、海面からの蒸散を通じて大気へと水分を供給しているのだ。

地球の気候変動と大きな関係をもつ海には、地球温暖化をやわらげる吸収源としての役割が期待されている。海は、人間活動により大気中に放出された二酸化炭素(CO2)の約30%を吸収していると言われている。また、海の熱容量は大気の約1000倍もあり、海が大気から多くの熱を吸収してくれれば、地球温暖化の進行を抑制することができるかもしれない。2007年に公表されたIPCCの第4次評価報告書は海洋でも温暖化が進行していると指摘しているが、貯熱量が減少している海域もある。海と気候との関係にはまだわからないことが多いが、海が地球の気候に影響を及ぼすことは、エルニーニョ現象ラニーニャ現象の発生を見ても明らかだ。

一方、海には私たち人間にさまざまな資源やエネルギーを供給するという大きな役割がある。とくに四方を海に囲まれた日本のような地域では、魚などの水産資源を食する「魚食文化」を基本とするところが多く、水産業を通じて海と深い関係を築いてきた。しかし、わが国の水産業は、担い手の高齢化や後継者難、若者の魚離れ、世界的な経済不況などによって岐路に立っている。それに加えて、気候変動に伴う水温の変化や海洋環境の悪化、各国による海洋資源の争奪などにより、漁獲高の低迷が続いている。こうした中、水産資源の持続可能な利用を確保することの重要性が、生物多様性の保全の観点からも認識されつつある。

海が人間にもたらす資源には、食物のほかにも鉱物やエネルギーなど多くの種類がある。とくに水深数百〜数千mの深海底にある「深海底鉱物資源」には、レアメタルであるニッケルやコバルトをはじめとして多くの鉱床が眠っている。また、以前にも増して大きな期待が寄せられているのが、エネルギー資源の供給源としての役割だ。例えば、石油については世界の全生産量の約3割が、天然ガスについては約2割が海から生産されている。近年、海洋油ガス田の開発対象は深海底や氷海へと拡大しており、これらの比率は今後ますます高まっていくことが予想される。さらに、東部南海トラフ海域にはわが国における天然ガス消費量の約14年分に相当する資源量のメタンハイドレートがあることが明らかになった。

このようにさまざまな役割を果たしている海が今、危機的状況にある。人間活動に伴って発生するゴミの投棄や化学物質による汚染が深刻化している。また、地球温暖化がサンゴ礁をはじめとする海洋環境や生物多様性へ及ぼす影響は計り知れない。私たち人間を含めた地球上のあらゆる生物は、海から生まれ進化を遂げてきた。海の環境を悪化させることは、海がもつ多くの役割を失わせることだけでなく、私たち自身の未来を失わせることにもつながる。海の恵みに感謝しつつ、その環境を良好に保全して、持続的に利用していくことが必要だ。

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