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「里山資本主義」 詳細解説

読み:
さとやましほんしゅぎ
英名:
Satoyama Capitalism

現代の世界においては、日本や欧米などの多くの国々が資本主義を採用している。資本主義は、資本として生産手段をもつ資本家が、利益を追求するため、労働者から労働力を商品として買い取り、商品の生産やサービスの提供などを行う経済体制のことだ。産業革命以後に世界中へ広がり、20世紀初頭に経済学者のケインズなどが提唱した修正資本主義を経て、20世紀末には「小さな政府」などを標榜する新自由主義の考え方に基づく経済政策が大勢を占めるようになった。その一方で、貧富の差の拡大など資本主義がもたらした豊かさのひずみと代償が、地球全体で現れている。

また、増え続ける世界の人口とそれに伴う食料や資源の危機、水資源の枯渇、地球温暖化や環境汚染などの問題は、資本主義経済の根幹を成す市場経済の論理や、金融資本主義の原理では解決できないことが、これまでの反省から認識されている。日本では、少子高齢化や都市への一極集中、地域の過疎化などの問題が深刻化している。こうした中、資本主義社会で生活しつつ、里山での暮らしや労働をサブシステムとして個人が用意することを推奨する「里山資本主義」の考え方が広がりつつある。

里山に息づく資源に価値を見出す考え方や生き方は、これまでもさまざまな個人や団体などにより提唱され、実践されてきた。里山資本主義は、従来の理念や活動を継承しつつ、里山に「金銭換算できない価値」と「金銭換算可能な価値」の両方を見出して、都会人と地域で生きる人の両方に、里山の価値を最大限に活用することを求めている。たとえば、森林破壊や林業の衰退が各地で大きな問題となっている中、製材過程で出る木くずをバイオマス発電の燃料に活用し、産業廃棄物処理費を削減しながら売電収入につなげた事例が話題を呼んでいる。

里山資本主義の提唱者である藻谷浩介氏は、里山を「見えない資本」と位置づけて、その潜在的な価値を最大限に生かすよう提案している。実際に、都会で暮らしていた人が里山に移り住み、自給自足に近い生き方を実践する例は少なくない。そこまでいかなくても、週末などに里地里山へ出かけて、自然や文化、地域の人々との交流などを楽しむグリーン・ツーリズムを行う人は多い。このように里山資本主義は、現在の社会の仕組みを維持しながら、自然や地域の資源を持続可能なかたちで生かし、これまでの資本主義に足りなかったものを補おうという考え方だ。

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