A: 国連環境計画(UNEP)の主導により、途上国などで深刻化する水銀による環境汚染や健康被害を防止するための水俣条約が、2013年10月に採択された。その内容は、新規の鉱山開発を条約発効後に禁止し、既存の鉱山からの産出も発効から15年後に禁止する。また、電池や蛍光灯など水銀を含む製品の製造と輸出入を2020年までに禁止する。さらに、苛性ソーダ製造過程における使用を2025年までに、アセトアルデヒド製造過程における使用を2018年までに禁止する。後者は水俣病の原因となった製造方法だ。このほかに、大気・水・土壌への放出に関する規制もある。
A: わが国で水俣病を引き起こしたメチル水銀などの有害物質による環境汚染や健康被害が、中国やブラジル、東南アジア、アフリカなどの途上国で深刻化している。原因として、金の採掘場で用いられる安価な抽出法である「水銀アマルガム法」による水銀蒸気などの流出や、水銀を含む廃製品や廃蛍光灯の回収・処理がきちんと行われていないことなどがあげられる。途上国では、廃棄物からの水銀回収や公害防止のための設備を整備する技術的・経済的な余裕がないのだ。一方、魚食の習慣がある国では、胎児に低濃度のメチル水銀による影響がみられるという報告もあり、水銀汚染は世界的な広がりを見せている。水銀汚染を根絶するには、分別回収の徹底や製品中の含有量に関する情報の普及、不使用製品への代替などの取り組みが不可欠だ。