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「水俣条約」 詳細解説

読み:
みなまたじょうやく
英名:
Minamata Convention on Mercury

有害物質である水銀による環境汚染と人の健康被害は、21世紀に入ってもなお途上国で深刻化している。原因として、金の採掘に伴う汚染物質の流出や、廃棄された蛍光灯の回収や処理が不十分であることなどがあげられる。なかでも毒性が強いメチル水銀はわが国で水俣病を引き起こした原因物質で、中毒や腹痛、めまい、知覚障害、運動麻痺などの症状につながる。こうした問題に対応するため、欧州連合(EU)は使用などを規制する戦略を策定したほか、2006年発効のRoHS指令で電気・電子機器への使用を禁止した。

これに先立ち、国連環境計画(UNEP)は2001年から地球規模での水銀汚染に関連する活動の「UNEP水銀プログラム」を進めている。製品に含まれる水銀の削減や適正管理など7分野での技術協力や情報共有などを目的としており、多くの政府や国際機関、NGONPOの参画を得ている。水銀による汚染の危機にさらされている人は、金鉱などで働く労働者やその家族、胎児、乳児にいたるまで幅広い。こうした人たちの健康を中毒から守り、汚染物質の排出を世界全体で抑制していくには、使用量を減らし、適正に管理・廃棄するための国際的な枠組みが必要だ。

このため、2009年2月にケニアのナイロビで開かれたUNEPの第25回管理理事会で、水銀規制に関する国際的な交渉を開始する協定が140カ国以上の国々による全会一致で可決された。この協定は、水銀によるリスク削減に向けた法的拘束力のある条約を制定することと、そのために政府間交渉委員会(INC)を設置して2013年までにとりまとめることを目指すものだ。これを受けて、2010年にスウェーデンで、2011年に千葉市とブルキナファソで、2012年にウルグアイでINCが開催された。

その後、2013年1月にスイスのジュネーブで開催されたINC第5回会合で、条約の案文がまとまった。そして、同年10月に熊本市で開催された外交会議で条約が採択され、名称は日本が提案した「水俣条約」に決まった。正式名称は「水銀に関する水俣条約」。新規の鉱山開発については条約発効後すぐに、既存の鉱山からの産出も発効から15年以内に禁止される。また、水銀を一定量以上含む蛍光灯や電池などの製品の製造や輸出入を、2020年以降原則として禁止する。さらに、苛性ソーダ製造過程における使用を2025年までに、アセトアルデヒド製造過程における使用を2018年までに禁止する。

このほかに、大気への発生源として指摘されている石炭火力発電所からの排出を抑制するための規定も盛り込まれた。また、途上国に配慮した経過措置や、一時保管、廃棄物の管理、健康対策、資金及び技術支援などに関する規定が設けられた。日本は水銀の主要輸出国であることから、条約が発効すれば現在保有している水銀の適正な管理が必要となる。

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