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「セクター別アプローチ」 詳細解説

読み:
せくたーべつあぷろーち
英名:
Sectoral Approach

産業を電力や鉄鋼、セメントなどの部門に分け、温室効果ガスの排出削減量を部門別に算出して、国全体の削減量を積み上げる手法。2013年以降の気候変動枠組みのあり方(ポスト京都)を議論する上で重要なテーマのひとつとなっている。1) 削減目標を産業別に科学的、技術的に割り出して設定できる、2) 先進国と途上国に共通な尺度を提供でき、成長を制約しないため途上国も参加しやすい、3) セクターごとの重要技術の特定や適切な技術協力を迅速かつ容易に行える、4) 各国の目標の透明性や検証可能性、公平性が確保しやすい、といった利点がある。一方で、国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)などの国際的な話し合い以外にセクター別の交渉の場が必要になり交渉プロセスが複雑化することや、具体的な制度化には課題が多いという指摘もある。

福田首相は2008年1月のダボス会議で、ポスト京都の枠組みに関して、主要排出国が温室効果ガスの排出削減に国別総量目標を掲げて取り組んでいくための手法としてセクター別アプローチが有効であると強調した。また、同年5月に日本政府の主催によりフランス・パリで開催された「セクター別削減ポテンシャルの積み上げに関する国際ワークショップ」では、セクター別アプローチにより削減可能な量の積み上げや、削減の実現に向けた取り組みの成果を踏まえた国際的な知見の蓄積を図るための情報や意見交換が行われた。

また、議長サマリーで、京都議定書における国別総量目標に関する国際交渉において、「科学的な知見が十分に活用されたとは言えなかったこと」を反省点として指摘。セクター別アプローチが公平な国別総量目標の設定に有効であるという認識が共有された。このほか、主に次の点が確認された。1) セクター別アプローチは国別総量目標に代わるものではない、2) 先進国と途上国に一律の基準を当てはめるものでもない、3) 先進国・途上国の官民が共同でセクターごとに各国の削減行動や協力のあり方を議論し、実際の行動に移していくべき、4) 具体的な削減行動を取る上でセクターごとの特性や国ごとの事情に配慮することが重要、5) 実施にはデータ収集の強化が必要。

同ワークショップの成果は同年5月に神戸で開かれたG8環境大臣会合に報告され、そこで採択された「神戸イニシアティブ」で、セクター別の削減ポテンシャルの積み上げに関する科学的分析が検討事項となった。福田首相はまた、同年6月に公表した「福田ビジョン」で、温室効果ガスを2020年までに現状から14%削減するためにセクター別アプローチを適用すると明言。同年7月の北海道洞爺湖サミット(G8)で、セクター別アプローチは、中期目標の策定と各国の排出削減を進める上で有用な手法という評価を得るに至った。今後、UNFCCCなどの温室効果ガスの削減をめぐる国際交渉の場で、セクター別アプローチがどのように位置付けられるかが注目される。

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