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「IPCC第4次評価報告書」 詳細解説

読み:
あいぴーしーしーだいよんじひょうかほうこくしょ
英名:
The Fourth IPCC Assessment Report “Climate Change 2007”

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化問題に関する議論を行う公式の場として、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により共同で設置された。世界有数の科学者が自由な立場で多く参加し、発表済みの研究を検証、評価。地球温暖化などの人間活動によって起きる気候変動のリスクに関して、科学的な知見をもとに、社会・経済的な影響評価などの視点から検討を行い、各国の政府に助言を行っている。IPCCには次の3つの作業部会がある。1) 気候システムと気候変動に関する科学的知見を評価する「第1作業部会」、2) 気候変動に対する社会経済システムや生態系の脆弱性、気候変動の影響、適応策を評価する「第2作業部会」、3) 温室効果ガスの排出抑制と気候変動の緩和策を評価する「第3作業部会」。

IPCCが成果を5年ごとにまとめている「評価報告書」は、気候変動枠組条約(UNFCCC)など、気候変動に関する国際的な議論の基本資料として不動のものになっている。1990年に第1次評価報告書を公表して以来、1995年(第2次)、2001年(第3次)に評価報告書をまとめてきた。そのIPCCが2007年11月の総会で受諾した第4次評価報告書(統合報告書)は、1) 気候変化とその影響に関する観測結果、2) 変化の原因、3) 予測される気候変化とその影響、4) 適応と緩和のオプション、5) 長期的な展望、の主題のもとに、3つの作業部会による報告書をまとめたものだ。3年の歳月と130以上の国の450名を超える代表執筆者、800名以上の執筆協力者、2500名以上の専門家の査読を経て、公開された。

同報告書は、気候変化とその影響に関して、大気・海洋の全球平均温度の上昇や海面水位の上昇、雪氷面積の縮小などさまざまな変化が観測されており、地域的な気候変化により自然生態系が影響を受けていると指摘。一方、世界の平均気温について、100年間(1906年から2005年まで)の間に全体で0.74度上昇したと報告し、20世紀後半の北半球における平均気温は、少なくとも過去1300年間で最も高温であった可能性が高いとしている。そして、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い(発生確率90−99%)」と報告している。

将来の温室効果ガスの排出量に関しては、まず、次の6つのシナリオを提示している。1) 高成長社会シナリオ・化石エネルギー源重視、2) 同・非化石エネルギー源重視、3) 同・各エネルギー源のバランス重視、4) 多元化社会シナリオ(環境への関心大)、5) 持続発展型社会シナリオ(環境保全と経済発展の両立)、6) 地域共存型社会シナリオ。このうち、最も排出量が多い1) の場合、世界の気温は100年後に4.0度も上がると予測。一番排出量が少ない5) でも1.8度の上昇と、どのシナリオでも気温の上昇は避けられず、前世紀に観測されたものより大規模な温暖化がもたらされると予測している。

気温が上昇すると、極端な高温や熱波の頻度の増加、大雨による洪水リスクの増加、熱帯低気圧の強まり、干ばつ地域の増加、極域の海氷縮小、感染症のリスク増加など、自然環境や人間社会にさまざまな悪影響がある。同報告書は、温暖化の影響を小さくするには、今後20年から30年間の努力とそのための投資が必要であると指摘。現在よりも強力な分野ごとの適応策を適切な緩和策と組み合わせることで、世界の温室効果ガス排出量の伸びを今後数十年にわたって相殺または削減できると報告している。なお、IPCCは、第4次評価報告書などにより地球温暖化に関する認知を高めたことなどが評価され、2007年度受賞のノーベル平和賞を受賞した。

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