20世紀は「モータリゼーションの時代」とも呼ばれたが、その一方で、エンジンなどの内燃機関で走るガソリン車やディーゼル車などから排出される窒素酸化物などの有害物質による大気汚染が社会問題となった。こうした車はまた、地球温暖化を進行させる温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)の排出でもあるため、環境負荷の小さいエコカーの開発が自動車メーカーにとっても大きな課題となった。エコカーの中でも、次世代型の低公害車として期待されているのが電気自動車だ。英語の「Electric Vehicle」を略してEVと呼ばれる。
EVは、鉛電池やニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの電池にたくわえた電気エネルギーを使って電動機で走行する。動力装置は、電気モーター、バッテリー、パワーコントロールユニット(動力制御装置)などで構成される。エンジンがないので走行中はまったく排気ガスを出さず、騒音も少ない。エネルギー効率が高く、CO2排出量をガソリン車の4分の1程度に抑えることができる。また、発電所から発生するCO2の量も、電力構成における再生可能エネルギーなどの割合が高ければ大幅に削減できる。さらに、夜間電力で充電することにより電力負荷を平準化することも可能だ。
EVの最大の利点は、家庭のコンセントなどから手軽に充電できる点だ。また、公共施設などに充電用のスタンドが整備されれば、走行の合間に充電することも可能となる。近年、リチウムイオン電池など蓄電池に関する技術開発が進み、充電にかかる時間が短くなるとともに1回の充電で走れる距離も長くなった。自動車メーカーの動きとしては、三菱自動車が4人乗りEVを、富士重工業が4人乗りと2人乗りのEVを開発するなど、コミューター型のEVが市場に投入される見込みだ。
政府はEVの普及を進めるため、公用車の切り替えにあたってEVや、電気とエンジンを組み合わせたハイブリッドカーを採用するよう努めている。また、2001年には環境、経済産業、国土交通の3省がEVをはじめとする低公害車の開発・普及を促進するための「低公害車開発普及アクションプラン」を策定。実用段階にある低公害車を2010年までに1000万台以上導入するという目標を立てた。
さらに、2008年の「低炭素社会づくり行動計画」では、EVなどの次世代自動車について、「2020年までに新車販売のうち2台に1台の割合で導入する」という目標を掲げた。EVは2009年に始まったエコカー減税の対象でもある。しかし、総務省は2009年6月に公表した低公害車に関する政策評価書の中で、EVの保有台数がほとんど増加していないと指摘。より実効性のある普及策の実施を各省に求めている。